第8章 自傷の傷と心の傷
「真愛殿、この人は高荷恵殿」
『あ、椎名真愛です』
「さっきは助けてくれてありがとう」
『い、いえ……』
よく見ると、すごい美人だ
髪の毛長いし、なんか大人の女って感じ
この人がなんで追われていたかは知らないが
あまりいい話ではないんだろうなってことはなんとなく理解した
道場に戻れば、稽古中の薫さんと弥彦君がいて
薫さんは、恵さんの姿を見て何も言えなくなる
その気持ち、すごくわかる
どうやら恵さんを当分この道場に置いとくらしい
理由はわからない
でも、隣で内緒話をしている緋村さんと相楽さんから“アヘン”という物騒な単語が聞こえてきた
本当によくない話だった
薫さんを巻き込みたくないため、
“賭場の勝ち分のカタ代わり”と嘘をつく緋村さん
そして薫さんに殴られた
「えっと、高荷さんでしたよね。すみません、こいつらには私からよく言っておきますから、どうぞお帰りになって」
それに対し、恵さんは
「あら、私は帰る気ないわよ」
「え?」
「私ねえ、この人のコト気に入っちゃったの。片時も離れたくないくらいよ」
薫さんに殴られ、まだ目を回している緋村さんの肩を抱く恵さん
女の戦いが始まりそうな匂いがする
私も女だけど、女って怖いね
「ダ、ダメよ。そんなのダメ!!」
「あらあ、なんでかしら。あなた剣さんの恋人って訳じゃなさそうだし、そんなコト言える立場なのかしら」
『あの、喧嘩はやめて、みんなでお茶でも……』
「あんまりからかうんじゃねーよ。この嬢ちゃん、すげー単純なんだからよ」
“単純”を強調して言う相楽さん
ああ、余計なこと言わないで……
キレた薫さんは、全員道場から全員追い出した
もちろん私もだ
私、何も言ってないのに……
「薫の機嫌が直るまで散歩してくる」
『あ、気を付けてね』
「おう」
弥彦君はブラブラと散歩
残された4人