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るろうに剣心【東京編】

第7章 隠した本音




“変わった”と思っていたけれど
実際は何も変わってなどいなかった
私はあの頃と同じで弱いまま

また涙があふれた
泣いても何も変わりはしないというのに

『最悪だ――――――……』
「何が最悪でござるか?」

聞きなれた声
後ろを向けば、声の主である緋村さんがいた
涙をぬぐって、何もなかったかのように平然とふるまう
それを彼も感じ取ったらしく何も言わず、私の前に胡坐をかいて座る

『えっと……なんでもないです』
「おろ?そうでござるか」
『えっと……』
「ああ。左之が真愛殿が救急箱を持って拙者を見ていると言ったから。声をかけてくれてもよかったのに」
『ご、ごめんなさい』

それができればどんなに楽か
私は緋村さんの左の二の腕に消毒液を垂らす
傷は深いが、血はほとんど止まっていた
二の腕に包帯を巻きながら、静かな時間が流れる
少し、気まずい

「心配をかけたようでござるな」
『え?』
「左之に聞いた。すまないでござる」
『あ……はい。でも、無事でよかったです、2人とも』

私がそう言えば、緋村さんは私の頭を撫でた

また、だ……
もっと触れてほしい
もっともっと……
でも、そんなわがままを言えるはずもなくて
離れるその手の温もりに寂しさを覚えながら
その一方で、頭に残る微かな温もりに浸っていた

気づきたくない気持ち
蓋をしたこの感情
今はまだ、知らないフリをさせてほしい
弱い自分を守るために

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