第7章 隠した本音
「おーい、起きろ」
誰かの声で、目が覚める
目を開ければ、そこには相楽さんがいて―――相楽さんしかいなかった
「剣心、何処?」
そう聞く薫さんに相楽さんは言った
「剣心なら帰んねーよ」
目を開く薫さん
昨日の闘いで、今度の標的は緋村さんに移ったらしく
私たちに迷惑をかけないようにするためしばらく道場(ここ)には帰ってこないとのこと
「で、剣心何処行ったの!!」
「とりあえず河原に行くとさ。剣心が言うには、攻めやすく且つ逃げやすくするために“川”を拠点に行動するコトが多いんだそうだ」
それを聞いた瞬間薫さんは走り出した
緋村さんを捜しに行くと言い張る
「バカ言うねェ!!刃衛は並の敵じゃねェんだ!これ見てもわかんねェか!あんたが行ってもかえって足手まといになって剣心を困らせるだけだ!!道場(ここ)で大人しくしてな。それが一番――――――」
言葉を詰まらせる相楽さん
その眼の先には今にも泣きだしそうな薫さんの姿が
彼女は言う
もし、緋村さんが帰らないでそのまま旅に出たらどうするの、と
「父さんに死なれて、喜兵衛に裏切られて、その上、剣心まで去ってしまったら…また独りぼっちになるくらいなら危険な目に遭うほうがずっといいわ!!」
そして彼女は走り去った
……独りぼっち、か
その言葉が妙に心に刺さる
彼女にとって心の支えとなっているのは私ではなく緋村さん
でも、私の心の支えとなっているのは薫さんなんだ
初めて心を許せた人
初めて胸を張って“友達”だって言える人
そう思っていたが、彼女にとって私はそういう存在ではなくて、
それが寂しくて、辛いんだ
自分でもめんどくさい性格してるって思う
裏切られる苦しみは私も知っている
何度も裏切られたけど、失う苦しみは未だに慣れない