第6章 喧嘩
河原に着き、二人の喧嘩を見守る
細身の人の名は“相楽佐之助”というらしく
またの名を“斬左”
彼のもっている武器は斬馬刀というらしく
戦国時代以前に敵将を馬ごと斬り倒す事を目的に製造されたとのこと
巨大な刀剣は、確かに馬ごと斬り倒す威力はあるだろう
それに対し緋村さんは“逆刃刀”
不殺(ころさず)を信念に持つ彼の愛刀
『死なないで……』
気が付いたら、そう言っていた
相楽さんは弾丸のように飛び出す
それをよけ、彼の脇腹に刀を振り落す緋村さん
勝敗がついたかと思ったが、平然と立ち上がる相楽さん
「喧嘩てえのは、真剣での斬り合いと違って剣に強え者が勝つんじゃねえ。倒れねえ者の勝ちなのよ!」
「左様な台詞は、最後まで立っていられた時に言うでござるよ」
再び構える二人
そこからは早かった
緋村さんの連撃が、相楽さんの体を打つ
地面に倒れる相楽さん
さすがにもう続けることは酷だろうと思った
相楽さんのところに行き、手当てしようと思った矢先
パァン
銃声の音が響いた
緋村さんに拳銃が放たれたのだ
『緋村さん!!』
しかし、彼は傷一つついていなかった
弾を鍔で受け止めていた
怪我していないことに私は安堵の溜息を吐く
それもつかの間
今度は私たちにそれが向けられる
『薫さん、ひとまず逃げよう。弥彦君も』
「だめ…。さっきので腰が…」
私は二人を守るように前に立つ
近づいてくる伍兵衛という男
手が私の胸ぐらに触れる瞬間
相楽さんが持っていた斬馬刀が、男の腕を斬った
「言ったはずだぜ!これは俺の喧嘩、邪魔する奴ァ許さねェ!俺は負けねェ!絶対に負けられねェ!!!」
彼の信念はどこかゆがんでいるようにも思えた
そして、私は気が付いた
彼にずっと抱いていた違和感の正体が