第6章 喧嘩
あれから2週間
私は毎日赤べこに顔を出し仕事をしていた
顔なじみのお客さんもできて、時間が空けば、その人たちと話をすることもしばしば
「真愛ちゃん、もう怪我は平気なのかい?」
『はい、もう大丈夫ですよ』
「あんたの顔に傷が残るんじゃないかってひやひやしちゃったよ、おじさんは!!」
『心配してくれて、ありがとうございます』
「なに、ここに来る常連はみんな真愛ちゃんのこと好きだからよ!わはははは!!ホレ、勘定な」
なんとも愉快な人たちだ
つられて私も笑ってしまった
「ご苦労様。はい、これ今日の分やさかい」
妙さんから給料をもらって道場へ帰る
すると玄関から誰かの声がする
『お客さんかな』
私は玄関の引き戸を開ける
『ただいまで―――――……』
目の前にいたのは2週間前に私を助けてくれた悪一文字の人がいた
「この前の嬢ちゃんじゃねえか。あんたもここに住んでたんだな」
どこか大人びている笑顔
笑ってはいるが、私にはそれが嘘っぽく見えた
この感覚を私は知っている気がする
「道場(ここ)じゃちょっと狭えな。広い河原にでもでようぜ」
……いったい何が始まるというのだ
「喧嘩しにきたって話よ」
『喧嘩……?』
「ここの土地欲しさにあのおっさんたちがあの男を雇ったんだ」
弥彦君がそう言う横で、薫さんは悲しそうな顔をする
そんな顔をしないでほしい
薫さんには笑っていてほしいと願う