第4章 想い
私はもう一度弥彦君の頭をなでた
不思議そうに見てくる彼
『もう寝ようか。怪我にもひびいちゃうし』
「わーったよ」
部屋に戻る弥彦君
私も自分の部屋に戻ろうとしたとき
緋村さんに会った
申し訳なさそうな顔をする緋村さん
その顔を見て、今の会話を聞かれたんだということがわかった
「聞く気はなかったのでござるが……」
『大丈夫ですよ。弥彦君にも言いましたが、ここにいる人たちのおかげで私は前より、少しずつですけどいい方向へと変わってきてるって思うんです。だから感謝しているんです。謝らないでください』
“ありがとうございます”と頭を下げれば
緋村さんは私の頭をなでた
また、だ……
彼が私の頭を撫でるたび、安心する
母親の腕で抱かれる赤ちゃんのように
彼からすれば兄が妹を慰めるって感じなんだろうけど
ずっと、撫でてほしいなって思うのは
甘え?わがまま?
よくわからない
わからないから、戸惑ってしまう
「拙者は真愛殿が笑った顔が好きでござるよ。拙者だけじゃなくてきっと薫殿も弥彦も同じ気持ちでござる。だから、」
“笑って”
その言葉がなぜか胸にストンと落ちた
不思議なほどなんの抵抗もなく
そしてこの日からだろうか
私に、笑顔が増えていった