第4章 想い
「-----おい」
後ろで声がした
驚いて振り向けば、そこには弥彦君がたっていた
もしかして、泣いている姿を見られた
私はごまかすかのように笑って見せた
『眠れないの?』
「お礼を言おうと思って探してたら、泣いているから」
『……あ、はは』
「剣心に聞いた。お前のこと」
緋村さん、話したんだ
いつかはわかることだし、いいんだけどね
「つらいのか?」
心配そうに見てくる小さな剣客さん
まだ幼いながらも、どこか大人びている気がするのは気のせい?
『つらい、のかなぁ。よくわからない』
「泣いてんのにわかんないのか?」
『うん。私は卑怯だからそういう言い方しかできない。でも、一つだけ言うなら、死んだこと後悔してるかな』
「だったら死ななきゃよかったのに」
私は“そうだね”と笑った
すると、弥彦君は“悪い”と言った
『どうして謝るの?』
「なんか今にも泣きそうな顔するから。そういう顔させたいわけじゃなかったのに」
『大丈夫だよ。私もね、弥彦君の言う通りだと思う。後悔するくらいなら死ななきゃよかったのにね』
死なないのが一番
でもそれができなかった
精神的にも肉体的にも私は限界だった
あの時は
『弥彦君は、死んだらだめだよ。そんなことはないと思うけど』
「ったりめえだろ。俺、まだ生きたいもん」
その言葉に私はふふっと笑う
「-----なぁ」
『なに?』
「死んだこと、後悔してるんだよな?」
『……うん、そうだね』
「俺や剣心、ブスと出会ったことも後悔してる?」
まっすぐ前を見て、そう聞いてきた
子供らしい質問だなぁ
私は彼の頭をなでた
『全然。むしろ、感謝してるよ』
「そうなのか?」
『うん。私はこの世界に来て変わってきてる。自分でも驚くぐらい。変われたのは、ここの人たちと出会ったからなんだ』
あっちの世界に戻りたいとは思う
思うけど、でも、やっぱりここにいたいと思うほうが大きい
両親には悪いけど、私はこの世界で生きていく