第3章 おでかけ
薫さんの道場に居候して、何日か過ぎたころ
私は、この世界が“るろうに剣心”だということを知った
題名だけ聞いたことがあるだけで、内容も何も知らない
でも、有名だよね
映画にもなったみたいだし
この日、私は暇を持て余していたので
短剣術と体術の稽古を一人でしていた
といっても、柔軟だったり、基本体型だったり
それくらいのことしかやっていない
でも、体を動かしていないと、何か落ち着かない
私と同じく居候の緋村さんは、家事全般を行っている
男の人にしては、手際が良く料理もおいしい
私もたまに緋村さんの手伝いをすることがあるが、
あんなにテキパキとはできない
稽古も一通り終わり、手の甲で汗をぬぐう
道場をでようと思った時、ふと壁に掛かってある木刀をみつけた
剣術かぁ……
興味がないわけではない
「真愛殿、拙者おつかいに行ってくるでござるよ」
私は無言でうなづいた
緋村さんの足音が聞こえなくなり、私は木刀をつかむ
薫さんは出稽古の最中だから、まだ帰っては来ないだろう
なんか、盗人になった気分
私は心の中で薫さんに謝った
やはり、短剣と違い重い
でも、なぜかわくわくしている自分がいる
木刀を持ったことなんてない
それどころか竹刀もない
薫さんが竹刀を振っている姿を何度か見た
見よう見まねだけど、振ってみた
意外と腕の筋肉を使う
だけど、私は無我夢中で振り続けた
「だめだめ、そんなでたらめに素振りをしたら」
びくり、と肩がはねる
振りむけば、そこには師範代の姿が
勝手に木刀を使ったことに対し、罪悪感が芽生える
『薫さん、木刀……』
「あぁ、いいわよ。勝手に使っても。剣術に興味あるんでしょ?」
『うん……』
私の返事に薫さんは嬉しそうな顔をした
そのあとは、持ち方や素振りの仕方を教えてもらった