第13章 ツンとデレは使い分けが大事
ガキの部屋へと戻り、あらかじめ敷いてあった布団に寝かせる。
自分の部屋へ戻ろうと立ち上がり、
くいっ
ベタンッ
思い切り床に倒れこんだ。
くっそ痛ェ。
「アァ?」
見れば足元の裾をしっかりと握るガキの手。
打ち付けた鼻をさすりながらしゃがみ、ガキの手を解こうと力を込めるが、
「チッ」
すげぇ馬鹿力。
仕方なくガキの横に座り直しその寝顔を眺める。
それにしても、
こんなに無防備に寝やがって。
俺が男だって事理解してるんだろうか。
どうもコイツには危機感ってやつがなさすぎると思う。
不意にガキの柔らかそうな唇に目をやる。
その唇に顔を近づけ、
そっとその頬に唇を落とす。
…は?
頬?
唇を奪ってやろうと思ったのに?
何怖気付いてんだよ。
思えば俺はコイツに手を出したことがねェ。(ぁあ、キスぐらいは前にしたか)
何人もの女共を抱いてきたこの俺がだ。
コイツは別に不細工ってワケじゃねェ。
どっちかってーと良い顔立ちをしていると思う。認めたくねェが。
ただ、コイツの笑顔を見てると、
その笑顔を守りたくなる。
俺はチサを大切に思ってるのか?
………いや、
まさかな。
はぁ、と重い溜息を付き、俺の苦労も知らないでスヤスヤとアホみてェな顔をして眠る柔らかそうな頬をつねる。
ガキがぅうんと唸り、
『もー高杉さん』
やべぇ、起きたか?
『お菓子は一つまでって言ってるでしょぉがー』
寝返りをうち、再びスヤスヤと寝息を立て始める。
…なんちゅー夢を見てんだよ。
思わず笑いが込み上げる。
コイツの前だと調子が狂ってばかりだ。
ガキがスヤスヤと眠る布団を捲り、俺もその温かな布団に入り横になる。
コイツが言っていた異世界から来たと言うのが本当の事なら、コイツには帰る場所がある。
いつか、突然にいなくなってしまう日が来るかもしれない。
だが、チサ、お前ェの隣は心地良い。
お前ェの笑顔は俺の中の獣を黙らせる。
まだ、しばらくこのまま側にいてくれよ。
俺は安らかなチサの寝顔を見、その小さな体を抱きしめ、そっと眠りに落ちた。