第13章 ツンとデレは使い分けが大事
それから幾度となくチサを見かけたがどこでもアイツは笑顔を貼り付けていた。
女中の仕事をしている時も、飯を食う時も、隊士達と戯れている時も。
晩飯前に気まぐれに来島の部屋の前を通った時には、
『うわぁぁぁん』
来島の部屋の襖がガラッと勢いよく開けられチサとぶつかった。
何事かとソイツを見れば、
超号泣。
「どうした?」
するとチサは震える手で来島の部屋の中を指し、
『アキたんが死んじゃったよぉぉー!』
……は?
チサが指差した先にはテレビ。
部屋を見渡せば来島も泣いていた。
流れるエンディングロール。
ぁあ、セカチューね。
来島とよくドラマを一緒に観ている事は知っていた。
理解すると同時に脱力感と怒りが湧いてくる。
「お前ェ…
紛らわしいことすんじゃねェ」
ゴンとチサの頭にゲンコツを食らわせ足早に自室へ戻ることにした。
アイツは今日、見たところ笑で辛さを紛らわせているように感じる。
昨日の今日だ。
さすがに何日も暗くされるのには嫌気がさすが、
少しくらい自分に素直になっても良いとは思う。
…
くそっ
何で俺は今日アイツの事ばかり気にかけている?
あんなガキの強がりなんて放っておけば良いものを。
昨日のアイツは、ボロボロになりながらも敵味方関係なく全員のために走り、闘い、
そして失いたくない奴を救えなくて、
似蔵の死に際を見送るアイツを見ていられなかった。
俺も甘くなったものだな。
はぁ、と溜息をつき、
アイツに甘い物でも強請りに行こう。
そう思い、一旦部屋を出て隣のチサの部屋の襖を開ける。
だが、チサの姿はない。
そういえば、晩飯後からアイツを見ていない。
まぁ、アイツがいる場所なんて見当が付く。
俺は再び部屋に戻り、羽織に袖を通し甲板へと向かう。