第12章 紅い桜の木の下で
……
…
俺は死んだのか。
さっきから走馬灯ってやつが頭を駆け巡っている。
しかしどの情景に浮かぶのは、あの屈託の無く笑うチサの姿。
ちょっと馬鹿で、女の子らしくて、綺麗な声で歌う。
強く、優しく、純粋で、それ故に弱いチサ。
こんな人斬りの俺に、一時の間だったが暖かい感情をくれたチサ。
俺はあの子が愛おしくて堪らなかった。
恋だなんだとか、そんな生温い感情などではない。
それ以上に深い愛情。
俺はチサの事を我が子のように愛しんでいたんだ。
『仁蔵さん!仁蔵さんっ!』
あぁ、呼ばれている。
俺は消えゆく意識を僅かに擡げ、目を開けた。