第12章 紅い桜の木の下で
急いでまた子ちゃん達の元へと向かう。
中へと来てみると丁度また子ちゃんが仁蔵さんに銃を向けているところだった。
『また子ちゃん!!』
「チサ⁉︎」
私は咄嗟にまた子ちゃんの前に立ち、その瞬間似蔵さんの紅桜で薙ぎ払われる。
『うぐっ!』
なんとか紅桜を受け流したものの派手に吹っ飛ばされた私は壁へと打ち付けられる。
もう頭痛なんて言ってる場合じゃない。
全身が痛い。
「何やってんスか!早く逃げるっス!!」
『私は大丈夫。もうすぐこの船は落ちる。だからその前にそこで伸びてる武市先輩を安全な場所に連れてって』
「でも…」
『私は似蔵さんを放ってはいけない。だから、ね?お願い』
私を心配し駆け寄って来たまた子ちゃんに力なく笑ってみせる。
納得はいかないようだったが、それでもわかったと言ってくれたまた子ちゃんが武市先輩を引きずってその場を後にする。
「完全に紅桜に侵食されたようだな!
自我さえない似蔵殿の身体は全身これ剣と化した!」
屋根の上から吼える村田さんに真っ黒な感情が沸き起こる。
それと同時に酷くなる頭痛。
最早目眩がして視界も悪い。
なんとか似蔵さんに目をやると、銀さんに向かって紅桜を振り下ろそうとする姿が映った。
『止めて!似蔵さん!!』
必死の叫び声ももう似蔵さんには聴こえない。
その時、銀さんを掴む手に刀が突き刺さった。
「死なせない!!コイツは死なせない!これ以上その剣で人は死なせない!」
鉄子さんだった。
必死に刀を振り下ろす鉄子さんに向けて降ろされる紅桜を神楽ちゃんが蹴り上げ止める。
「そのモジャモジャを」
「離せェエエエエエ!!」
銀さんを護ろうと神楽ちゃん、新八、徹子さんが似蔵さんにしがみつく。
私もふらつく体を精一杯動かし、銀さんに巻きつき離さない紅桜に飛びつく。
それでもやはり紅桜に全て乗っ取られた似蔵さんには敵わない。
全員が振り落とされ、鉄子さんに紅桜が振り下ろされる。
ドンッ
巻き起こる粉塵の中、そこにいたのは傷一つ負っていない鉄子さんの姿。
その少し離れた場所に、
「兄者ァアア!!」
妹を庇ったのであろう、血まみれの村田さんが横たわっていた。
鉄子さんが村田さんの所へ駆け寄る。
村田さんを抱え泣き叫ぶ鉄子さんへとまた似蔵さんが刀を振り上げられる。