第12章 紅い桜の木の下で
さっきよりもズキズキ痛む頭を抱えながら甲板に走ると、
高杉さんが危ない!
私は高杉さんの前へと大きく跳ぶ。
キンッ。
間一髪でエリザベスの中へ隠れていた桂さんからの一撃を食い止める。
「…⁉︎お主…」
ズキンッ
『……っ!!』
酷い頭痛に思わず崩れ落ちる私の体。
「⁉︎」
私の体を支える高杉さん。
その懐から一冊の本が落ちる。
それを桂さんは見逃さず、
「まだそんなものを持っていたか。お互いバカらしい」
「そいつのおかげで紅桜から護られたてわけかい。思い出は大切にするもんだねェ」
私を支えながら高杉さんは皮肉めいて笑う。
「いや、貴様の無能な部下のおかげさ。
よほど興奮していたらしい。ロクに確認もせずに髪だけ刈り取って去っていったわ」
桂さんがチラと私を見たが、私が助けた事は黙っていてくれるようだ。
「で?わざわざ復讐しに来たわけかィ。奴を差し向けたのは俺だと?」
「アレが貴様の差し金だろうと奴の独断だろうが関係ない。だがお前のやろうとしている事、黙って見過ごすワケにもいくまい」
二人の睨み合いが続き、
ドゴォォン
「貴様の野望。悪いが海に消えてもらおう」
紅桜の生産場に大きな風穴が空いた。
「桂ァア!生きて帰れると思うなよォオ!」
また子ちゃんの怒声が響く。
「江戸の夜明けをこの眼で見るまでは死ぬ訳にはいかん。貴様ら野蛮な輩に揺り起こされたのでは江戸も目覚めが悪かろうて。」
桂さんが刀を向け高杉さんに向け、
「朝日を見ずして眠るがいい。」
ガシと桂さんに抱きつく神楽ちゃん。
桂さんはそれに気付いていない。
「眠んのはてめェだァァ!!」
神楽ちゃんが見事なバックドロップをかまし、
続いて新八もそれに続く。
なんか内輪揉めが始まったようだ。
それと同時に桂側の攘夷浪士がやってきた敵船から現れ、次々に攻撃に加勢する。
「おい、お前ェも来い」
呆れ惚け見ていた私を高杉さんが船内へと促し、それを守るようにまた子ちゃんと武市先輩が囲む。
立ち上がろうとして、あまりの頭痛にまた倒れこみそうな私を高杉さんが受け止め、
お姫様抱っこ。
お姫様抱っこですよ⁉︎
普段なら歓喜に鼻血どころじゃ済まない状況だけど頭痛が酷い今そんな余裕は無い。
私は大人しく高杉さんにお姫様抱っこされながら船内へと運ばれた。