第12章 紅い桜の木の下で
「酔狂な話じゃねーか。大砲ブッぱなしてドンパチやる時代にこんな刀つくるたァ」
「そいつで幕府を転覆するなどと大法螺吹く貴殿も充分粋狂と思うがな!!」
船内の一室。どこか薄気味悪い雰囲気の中、沢山の機械に繋がれてカプセルに入っている紅桜を眺める二人の姿。
私が高杉さんの隣へ駆け寄ると、私に気付いた高杉さんは私を一瞥し、構わず語り続ける。
「法螺を実現してみせる法螺吹きが英傑と呼ばれるのさ。
俺はできねー法螺は吹かねー」
そう言って不安気に見上げる私の頭をポンと叩く。
「侍も剣もまだまだ滅んじゃーいねーってことを見せてやろうじゃねーか」
「貴殿らが何を企み何を成そうとしているかなど興味はない!
刀匠はただ斬れる刀をつくるのみ!
私に言えることはただ一つ」
村田さんがカプセルに近づき手を添える。
「この紅桜に切れぬものはない!!」
高らかに叫ぶ村田さん、それを満足気に見やる高杉さんを他所に、私は複雑だった。
でも、私はコレが憎い。
桂さんや、銀さんや、高杉さん。
そして仁蔵さんを傷付ける紅桜が。
憎い。
憎くて堪らない。
私が黒い感情に押しつぶされていると、
ズキン、と頭が痛んだ。
高杉さんと別れた後、
今頃神楽ちゃんとまた子ちゃん達が口論しているであろう場所を通りがかると、
「身体中の痰よ、おらに力を」
「た〜ん〜じ〜る〜」
なんとも汚いが、両手を仰ぎ痰を出そうと頑張ってるまた子ちゃんと神楽ちゃん。
それをなだめる武市先輩。
ということはそろそろだな。
私はこれからすぐ起こるであろう揺れに備えた。
それからすぐの事。
ドォオン
船内が大きく揺れる。
多分今頃どこか船の一部が破壊されたんだろう。
私は相変わらずズキズキと痛む頭に、構わず走った。
ここからが正念場だ。
絶対皆助けるんだ。