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隻眼男と白兎

第12章 紅い桜の木の下で


日付けは代わり、今日は紅桜編二日目だ。


私は今、日課の早朝訓練の最中だ。

もっとも、いつも相手をしてくれる仁蔵さんは来ていないので今日は私一人で弓を射っている。

一旦弓を置き、今日これから起こるであろうことを頭に思い返す。


まず、
・銀時サイドにエリザベスがやってくる。

・銀さんが鍛冶屋兄妹の所へ赴く。

・新八とエリザベスが橋で張り込みをしていると仁蔵さんが襲いにやってくる。

・それを銀さんが助ける。

・一方で神楽ちゃんが鬼兵隊へやって来る。

とまぁこんな所か。


今日私が出来ることは、銀さんと仁蔵さんの戦いに首を突っ込むか、神楽ちゃんに怪我をさせないようにするか、このどちらか一方だ。

だが、私は人並以上には強いつもりだが、生憎仁蔵さんや銀さんと対等に戦えるような実力は持ってはいない。
そんな二人の戦闘に首を突っ込もうものなら、私の首は呆気もなく跳ね飛んでしまうだろう。

となると私に出来ることは一つだ。

“神楽ちゃんを助ける事”


『っしゃ!!』

気合を入れ直して弓を構え直していると、

「気合が入ってるじゃねェか」

『うおぉおう!!』

気付けばいつの間にか訓練場入り口にもたれかかっている高杉さん。
いつもいつも神出鬼没なお方だ。

『誰かさんが紅桜始めちゃったからね!私も私で大変なんですぅー』

むくれ気味に言えば、高杉さんはそうかと言って相変わらずニヤニヤ笑っている。

そんな高杉さんを背後に感じながら、私は的に向け神経を研ぎ澄ます。

弓を引き、

静止。


シュッ

パンッ!


『さっ!高杉さん!ご飯ですよ!!』

丁度窓のド真ん中に当たった矢を背に、高杉さんと食堂へ向かった。



『おかわりィイイ!!』

「うわぁ、今日は良く食うねぇ」

何杯目かわからない空になったお茶碗を受け取った今日の料理係の勘太郎さんが感嘆ともつかない声をあげる。

『まぁね!腹が減っては戦も出来ぬですよ!!』

山盛りに盛られたご飯を受け取り再びガガガと口にかきいれる。


これから忙しい時間が続くはず。

今のうちに英気を養わなければならない。


みんなを守るための体力と、


最悪の場合に耐え得る精神を。




「おいガキ…」

『ふぁんでふ?ふぁかふぎはん』

「…デブるぞ」

『……。
(ごっくん)
うるさいっっ!!!』

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