第12章 紅い桜の木の下で
高杉さんからの外出許可を得て、がむしゃらに走り出したはいいが、
肝心の場所知らねェエエ!!
記憶を振り絞り覚えているのは、小関館の暖簾があった事だけ。
時間が時間だけにちらほらとしかいない通行人に聞き回り、急いで向かう。
探し回って数十分。
川を繋ぐ橋に佇む二人の姿。
「ひとつやり合ってくれんかね?」
あわばばばば!
もう桂さん切られる直前やん!!
どうしよう⁉︎どうしたら止められる⁉︎
斯くなる上は…
『キャアアア!』
私は普段出さないぐらい女の子な悲鳴を辺り一帯に轟かせる。
「どうしました⁉︎」
私の思惑通り、奉行所の人が大勢こちらに向かってくるとわかると仁蔵さんは早馬のごとく逃げ去って行った。
この隙に私は桂さんの元へ駆け寄る。
そこには血まみれの桂さんが横たわっている。
髪は既に短く刈り取られていたが、仁蔵さんを急がせた所為あってか見た目以上にダメージは少なそうだ。
余談だが私は長髪と短髪だったら長髪派だ。
F○のセ○ィロス様然り、D○raymanの神○然り…
「何をしているか貴様…」
自分でも知らず知らずのうちに怪我そっちのけで桂さんの髪を愛でていると、いつの間にか桂さんは目を覚ましていた。
掠れた声を振り絞る桂さんはかなり辛そう。
『説明は後です。傷の手当をしないと』
私はこの時のために持参してきた救急セットで急いで止血、消毒を施す。
傷口を簡単に縫合し、包帯を巻く頃には桂さんの意識もハッキリと覚醒していた。
「何者かは知らぬが感謝する」
包帯も綺麗に巻き終え、救急セットの後片付けをしている私に深々と頭をさげる桂さん。
『いや、私はただのファンとして桂さんを助けただけですから』
まぁ、それだけの理由で助けた訳でもないんだけど。
『桂さん』
私は桂さんに向き直り言う。
『これからすぐエリザベスの所へ行ってきてくれはしませんか?』
先がわかるの事は伏せ、さりげなく言うが、
「すまぬがそれは出来ない」
多分これから鬼兵隊潜入のために動くのだろう。
あまり強要はできない。
「お主名は?」
『チサです。
高杉さんの事、嫌いにならないであげて下さいね』
振り返りざまに笑顔を向け、そして走り出す。
桂さんが呼び止める声が聞こえたが、私は走った。
他に出来ることをしなきゃ。