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隻眼男と白兎

第11章 ふとした瞬間、トキめく瞬間


「ここの焼きそばは全部私のものアルゥウウウ!」

たくさんの野次馬の先にいるのは、すごい勢いで焼きそば屋さんの焼きそばを平らげていくオレンジの髪の少女。

その向かいには屋台の主人と思われる、グラサンをかけたまるでダメなオッさんみたいな人が白目を剥いている。


この二人どっかで見たことがあるよーな…?


「オウ、チサじゃねーか」

ポンと肩を叩かれ、後ろを振り向くと、

『銀さん!』

そこにはいつもの死んだような目をした銀さんがいた。


ん?

てことはあの二人、神楽ちゃんとマダオもとい長谷川さんか!


「お前、今日高杉と一緒か?」

一人納得している私を他所に、銀さんが真面目な顔をして問う。

いや、拉致られました。

なんて事言えるはずもなく、

『今日は知り合いのバカに連れられて来ました』

若干オブラートに包んで答えると、銀さんは少し安心したように微笑んで、そうかと言った。


「んで?その知り合いとは別行動か「銀ちゃーん!マダオのシケた焼きそばだけじゃ足りないアルよー」

「オイ、銀さん!俺のバイトどーしてくれるんだよ!!」


銀さんが言い終わると同時に、先程野次馬の的になっていた二人がこちらに駆け寄って来た。

「⁉︎」

銀さんの隣いた私を見つけると同時に、駆け寄って来た神楽ちゃんと長谷川さんが驚いた顔をして、

「大丈夫アルか⁉︎あの天パになんかされてないアルか⁉︎」

神楽ちゃんが私と銀さんの間に割ってきた。

「おい神楽ちゃん?変な言いがかりつけるの止めてくれる?
コイツは新 チサ。俺の知り合いだ」

「いつの間にこんな可憐な女の子と知り合いになったアルか⁉︎ふしだらだわ!!」

銀さんの弁解に聞く耳持たない神楽ちゃん。

銀さんは呆れ顔だ。


「おい、銀さん。ホントいつの間にこんな年下の可愛い子と知り合いになってんだよ。隅に置けねーなぁ」

何やら銀さんの肘をつつく長谷川さん。


「言っとくけどコイツ20代だからな」

銀さんのため息混じりの声が聞こえる。

すると、長谷川さんが驚きの眼差しで私と神楽ちゃんを交互見る。


もう慣れっこですよ。
どーせ私は20代に見えないっすよ…。


若干不貞腐れる私を他所に、神楽ちゃんがいきなり私の手を握ってきた。

「チサ!一緒に遊ぼーヨ!」
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