第10章 酒は飲んでも呑まれるな
「なんだ!高杉じゃないか!お主達も花見か?だったらわし等と一緒にどうじゃ?」
なんとも気まずい再会を遂げた二人だったが、そんな雰囲気を物ともせずしゃべりだし、しかもそんな提案まで繰り出す坂本さんに、私は呆れを通り越して、思わず尊敬した。
「なぁ陸奥!此奴らも一緒でいいじゃろ?」
「わし等は構わんが…そちらはすごく嫌そうな顔をしてないか?」
「ええんじゃ、ええんじゃ!アッハッハッハ」
遠くですごく嫌そうな顔をしていた高杉さんを無理やり引っ張ってシートに座らせる坂本さん。
こうして、気まずい花見が始まった。
快援隊と鬼兵隊という実にありえないはずの花見を始め数時間。
始めは不機嫌をいっそう不機嫌にしていた高杉さんだったが、貿易商である快援隊の振る舞う色々なお酒を飲むうち、すっかり上機嫌で私が作ったおつまみをつついていた。
「いやぁ、それにしてもめんこい女子じゃのォ。おまんもなかなか隅に置けない男じゃけん」
高杉さんと坂本さんの間でお酌をする私の肩に手を回すモジャ頭。
それを私は軽く払いのける。
「あァ。使えそうだから拾ったガキだが、なかなか良い女だ。チビだがな」
ガキとチビは余計だが高杉さんがこんなに褒めてくれるなんて……かなり酔ってやがるな。←
高杉さんの顔をじっと覗き込むと、やっぱり顔がほんのりピンク色だった。
「ガキ、折角だ。お前ェの歌を披露してやれ」
『え⁉︎ヤダこんな人多いとこで』
「おまん、歌が上手いのか?ぜひ聴きたいものじゃけん」
期待の眼差しが心苦しい…。
けど、こんな大人数の前で歌えるほど私の肝は座っていないのだよ。
私がまだ渋っていると、高杉さんが近寄ってきて、
「ホラ、聴かせろ」
そんな子安セクシーボイスにこそっと耳打ちされたら…
『おっけー!我が命に代えても!』
私は簡単に買収されました。
歌おうとして息を吸い込んだ時、
バンッ
突然鳴り響いた銃声。
先ほどまで酔って寝ていたはずのまた子ちゃんがゆらりと立ち上がって、
「あはははははは!!」
暴れ出した。