第10章 酒は飲んでも呑まれるな
とりあえずまた子ちゃんと分かれて場所探しをすることに決め、ほんの数分後。
まるでこの場所にお座り下さいって桜達が言っているかのような最高の場所を見つけた。
周りにお客さんもいないし、取り囲まれた桜も綺麗。ここにしよ!
そう思い、持っていたブルーシートを広げる。
が、それと同時に隣方向からも同じ場所に広げようとしているシートとぶつかった。
『あ、すいません。先約ですか?』
「いやぁ、わしらも今見つけた所じゃけん。おネーサンに譲るけん」
ぶつかったシートに目を向けているので相手の顔は確認できていないが、こんな御時世に良い人もいたもんだ。
『なんかごめんなさい、ありがとうございま』
そこで初めて相手を見て、
絶句。
『あ。』
思わず声に出た。
このモジャモジャ頭にサングラス。
間違いない。
声のデカイ人、もといトラブルメーカー坂本辰馬だ。
この人が高杉さんと親しいのか知らない。けど、コイツが現れると十中八九、いや、絶対に面倒事が起こるのが漫画での鉄則だ。
早いとこ場所とって他人のフリしよう!!
しかし、
『あのぅ、さっきこの場所譲るって言いましたよね?』
シートを敷こうにも、一向にシートを片付ける気が見られない坂本さん。
「いやぁ、スマンのォ!わしも陸奥のやつに良い場所取ってこないと船と共に沈めるって脅されてるの忘れてた!」
アッハッハッハと能天気に笑う坂本さんに私の怒りが爆発したのは言うまでもない。
『コッチも怖い総督さんに殺されるんです!若い女の命と、汚いモジャモジャのオジサンの命どっちが大切か、私の命に決まってるでしょ⁉︎』
「アッハッハッハ。泣いていい?」
例え泣かれたって、私には失った信頼と尊厳を取り戻す譲られない戦いがここにあるんだ。一歩も譲らない。
あと、なんかコイツ腹立つ。(コッチが本音)
そんなやり取りをしていると、遠くから二つの人影がこちらへ向かってきた。
「オイ、いつまでモタモタしてんだ」
「バカ船長、早くしないと沈めるぞ」
菅笠を被った女の人陸奥さん以外の、紫、白、モジャ頭がお互いを見渡し、そして固まった。
「あ」
『あ』
「ア」
「?」
最悪のコラボレーションがここに誕生しました。