第10章 酒は飲んでも呑まれるな
数時間後、私たち鬼兵隊が降り立ったのは、何処かの星。
どうやら“宇宙旅便り”とかいう旅行雑誌に掲載されているほどの花見スポットらしく、まだ三月も初めというにも関わらず、辺り一面満開の桜一色だ。
そんなこんなで私はまた子ちゃんと場所取りに「オイ、クソガキ」ぐえっ
不機嫌丸出しの高杉さんに衿元を掴まれた。
「俺は全員呼んだ覚えはないんだが」
低い声で不機嫌に言われ、思わず冷や汗が流れる。
『あはははは…たまには大人数も悪くないですよ…』
こうなったのには深いワケがある。
***
『お花見♪お花見♪高杉さんとお花見〜♡』
スキップスキップランランラン。
上機嫌で船内をスキップしていた私の横を武市先輩が通りかかる。
「チサさん、そんな上機嫌でどうしたんです?」
「今日は高杉さんとお花見なんですよー」
浮かれ最高潮の私は何も考えずに今日の予定を話してしまった。
それがこの後どれほど後悔することになるか知らず。
「ほう。お花見ですか!うーん、長いことしてませんねー。たまにはいいかもしれませんね!」
ん?武市パイセン?
二人きりの花見デートなんだけど?
前から数人の隊士さんが歩いてくる。
「何ですか?お花見?」
お前らを誘った覚えはないぞ。
「俺も久々にお花見したいですね」
「俺この前入手した酒持っていきます!」
「羽目外しすぎないで下さいよ」
ねぇ、ちょ、聞いてるゥウウウ⁉︎
次々といろんな人が集まり、修学旅行前の学生のようにきゃっきゃっうふふしてる雰囲気の中、本当は高杉さんと二人きりのデート(借)ってことを言い出せるほど私の肝は座ってなく…
***
そうして今に至る。
不本意ではあるが、こうなってしまったのは自分の責任。
高杉さんにはぎこちない笑顔を向けつつも、ガックリと肩を落としている私は何度ため息をついたか知らない。
そんな私の様子を知ってか知らずか、
「まァいい。その代わり、とびきりの場所を選んでこい。それで不問にしてやらァ」
こそっと耳打ちする高杉さんに私は
『ありがとうございますゥウウウ!!』
私の鼻から舞った赤は、桜のピンクにも負けず辺り一面を染めた。