第10章 酒は飲んでも呑まれるな
開け放たれた扉の外に立っていたのは高杉さん。
高杉さんは私の隣にいる仁蔵さんを見つけるとあからさまに嫌な顔をした。
「おいガキ。ちょっとこい」
今度は高杉さんかと思いつつ、高杉さんのもとへ駆け寄る。
「お前ェ、あんまりアイツに近づくなつったろ。奴は死に囚われてる男だ」
どうやら高杉さんもあまり仁蔵さんを良く思ってはいないらしい。
『でも仁蔵さん良い人だよ!さっきも腕の手当てしてくれたし!』
ホラと私が綺麗に手当された腕を見せると、高杉さんはやれやれといった風にため息をついた。
「勝手にしろ。
それよりこれから出かける。一時間ほどで着くから支度しとけ」
それだけ告げ、訓練場から去ろうとしている高杉さんに声をかける。
『どこに行くんですか⁉︎』
すると、立ち止まり、でも振り返らずに答える高杉さん。
「花見だ」
それって二人かな⁉︎
二人きりのデートかな⁉︎
今度こそデートかな⁉︎
私が喜びに舞い上がったのは言うまでもない。
そして、そんな私たちの後ろで、仁蔵さんは微笑ましげに見守っていたのでした。