第9章 笑顔に騙される事なかれ
神威が帰った後の鬼兵隊はそれはもう忙しかった。
神威が破壊しまくった廊下のとりあえずの段ボール補強。
大食らいが食べ終わった大量の食器類の洗浄。
そして、不機嫌MAXな高杉さんのご機嫌取り。
『もー、高杉さーん!いい加減機嫌直して下さいー!』
私は今高杉さんの部屋で“高杉さんご機嫌取り作戦”を実行中だ。
褒めちぎってみる。→無視。
肩を揉んでみる。→微動だにしない。
くすぐってみる。→本気で殴られた。
コントしてみる。→盛大にスベった。
お色気攻撃!!→鼻で嗤われた。(何でだよォオオオ!)
何を試しても機嫌を治せる気がしない…。
一旦手を止め、思考を巡らせた。
…。
……。
……ピコーン!(何かが閃いた音)
私は閃いたと同時にダッシュで食堂へ行く。
ものの数十秒で戻ってきた私の手には、今日の夕飯で出そうと思っていたプリンが握られている。
『ほーら、高杉さんの大好きなチサ特製プリンだぉ〜』
一口掬い、高杉さんの顔の前へこれ見よがしに持っていく。
高杉さんの不機嫌な視線が一瞬プリンを捉える。
そして、スプーンを持つ手を掴まれ、
ガブっ
いっ……
『イテェエエエエエ⁉︎⁉︎』
手を噛みつかれた。
『痛いじゃないですか⁉︎何するんですか⁉︎⁉︎』
「フン。消毒だ」
なんだか満足気になった高杉さんが、私の手の中のプリンを奪い取り食べ始める。
なんてふてぶてしいやつだ。
しかしそんな高杉さんを可愛いとか思ってる私は、とんだ親バカ。いや、高杉バカだなと心底思いました。
アレ?作文?
そんなこんなで無事“高杉さんご機嫌取り作戦”に成功した私は、
夕飯を食べ、第二の作戦へと向かう。