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隻眼男と白兎

第9章 笑顔に騙される事なかれ


「チサに何してるスか!!!」

どうやら騒ぎに気付いたまた子ちゃんが、遠くから威嚇射撃をしてくれているようだ。


私はホッとしたと同時に気づく。

神威が、さも面白くなさそうにまた子ちゃんを睨みつけていることに。

あまりの不機嫌に顔から笑みまで消えている。


「ジャマしないでヨ」


ポツリと低く呟く。


そして神威はまた子ちゃんに標準を代え、拳を握りしめもの凄いスピードで向かっていく。


また子ちゃんはただの威嚇攻撃だが、神威のあの眼は本気だ。

本気の殺意だ。



私は咄嗟に立ち上がり、神威の後を追う。

そして、強く床を蹴り跳び、神威の後頭部目掛けて足を振り下ろす。


振り下ろした足は神威の頭を擦り、捕えられ、投げられた。

何とか空中でバランスをとって着地する。


奇襲攻撃は失敗したが、また子ちゃんから注意をそらす事には無事成功したようだ。


「やっぱり強いね!俺嬉しいヨ!」

『そりゃあどうもっ!』
こんな状況で褒められても全然嬉しくないけどねっ!


神威の手や足が飛んで来ればそれを躱し、隙のできた身体にこちらも攻撃を仕掛ける。
しかしさすが神威、ひらりと躱す。

私たちの攻防は暫く続いた。


どれぐらい続いただろうか。

なかなか着かない勝敗に、神威が勝負をしかけて来た。

助走を付け、私に突進する。


それを躱そうとして、


グキッ


…あ。


嫌な音がした。


私の足首が変な方向へ曲がり、体勢が大きく崩れる。


足を捻った。



こんな時にィイイイ⁉︎⁉︎



「残念。運は俺に味方してくれたみたいだネ」


相変わらず神威さんは私目掛けて突進してきている。

拳をきつく握って大きく振りかぶる。


いや、待って!

無抵抗の私にそんな全力パンチ当たったりしたら、
骨パーンってなっちゃうよ⁉︎
粉々だよ⁉︎
死んじゃうよ⁉︎⁉︎


しかし躊躇うことなく、手加減するでもなく、神威さんの拳は真っ直ぐに私を捉えている。




避けられない!!


そう思って目をギュッと瞑る。


がしかし、なかなか痛みはやってこない。



恐る恐る目を開けると、




『に、仁蔵さん⁉︎』



仁蔵さんが私の前に立ち、神威さんの拳を鞘で受け止めていた。

鞘には亀裂が入っている。

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