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隻眼男と白兎

第8章 黒い塊でも愛があれば関係ないよね!


『わぁ!また子ちゃん(砂糖)出しすぎぃ!』

分量違いの大量の砂糖をボウルに注ぎ込むまた子ちゃん。

ハイ、やり直し。

「え?コレ(砂糖)をココ(ボウル)に入れるスか?」

何度目かのやり直しの後、やっと測り終えた正しい分量の砂糖と卵の入ったボウルを交互に指差すまた子ちゃん。

「そう。優しくかき混ぜてね(跳ねるから)。うん。うまいうまい」

言われたとおり優しく慎重にボウルに入った卵と砂糖を混ぜ合わせるまた子ちゃん。

「きゃ!顔に(生地が)かかったっス!
…あ、コラ!チサ!そんなに(溶かしたチョコ)舐めちゃダメッス!」

私はというと、刻んで湯煎し終えたチョコを味見と称してつまみ食いしてるところだ。

『さっきまた子ちゃんもいっぱい(チョコ)舐めてたじゃん』


そうして何時間かの特訓の末、最初は黒いダークマターしか出来なかったが、やがて綺麗にハート形のチョコレート菓子が完成した。



『…と言うわけです!』


「…そういうコトか」

何故か可笑しそうにフンと笑う高杉さん。

…なんでだ?


高杉さんはまた子ちゃん作のハート型のチョコを見つめ、やがて口に入れた。

サクッ

もぐもぐ

「美味ェじゃねェかよ」

すっかり機嫌を直した高杉さん。

私も思わず笑顔になってしまう。


あっと言う間に食べ終えた高杉さんは、今度は私の紙袋に目をつけ始めた。

「お前ェは何かねェのかよ?今日はバレンタインってヤツだろ」

ニヤリと笑う高杉さん。

てか、高杉さんがバレンタインを知っている事に驚きだ。

まぁ、なんだかんだ高杉さんモテそうだからな。
若い頃はさぞかしチョコを貰った事だろう。(今も十分若いけど)


「私も腕によりをかけて作ったんですよ!」

じゃーん、と紙袋から取り出すのは、今さっきレンチンしてきたばかりでまだホカホカしている黒い塊。

それを持参して来た真っ白な皿に乗せ、持参して来た粉砂糖を振りかけ、仕上げにこれまた持参して来た甘さ控えめのホイップとミントを乗せる。


『フォンダンショコラって言います!味見してないから美味しいかわかんないけど…』

私は昨日、また子ちゃんの特訓と並行して、鬼兵隊用にブラウニー、高杉さん用にフォンダンショコラを作り上げたのだ。


高杉さんが目を輝かせている。

見かけによらずホントに子供なんだから。

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