第7章 未成年の飲酒・喫煙は堅く禁じられております
『はぁ…』
私は船の屋根に一人ポツンと膝を抱えている。
今だけは、例え高杉さんにでも会いたくはない。
…いや、会いたいけど、
会いたくて会いたくて震えるけども!
でも今会ったらきっと私はイライラしている自分を止められないから会っちゃダメなの!!
…高杉さんには特に。
『はぁ…』
口から漏れるのは溜め息ばかり。
気晴らしに歌でも歌おうかと息を吸い込み、
歌いかけて、止めた。
やっぱりそんな気分じゃない。
「歌えばいいじゃねェかよ」
気配には十分気をつけていたはずなのに、突然の高杉さんの声に驚き振り向く。
すると、そこには若干息を切らした高杉さん。
「お前ェがこんな所に居やがるから一苦労したじゃねェか」
高杉さんが私をギロリと睨む。
私はそんな高杉さんから顔を背ける。
『今は一人でお月見したい気分なんですっ!私だって感傷に浸りたい時だってあるんですっ!』
意地を張る私に高杉さんの呆れた風な溜息が聞こえる。
「お前ェ、
タバコがきれてイライラしてんだろ」
ギックゥ
「他の奴らに当たりたくないから、来島や俺を避けてるんだろ」
ギックギックゥ
「特に俺なんかは煙管使ってるからな。尚更イライラするんだろ」
鋭い!
鋭すぎるよ高杉さん!!
アナタのその包帯の左目は心理眼かなんかですか⁉︎
私の心の内をスラスラと読み上げるかのように当てていく高杉さん。
「じゃあお前ェ、このまま禁煙出来んのか?出来るまで俺等から逃げるのか?」
うっと返答につまる。
高杉さんは呆れたようにまたため息をついた。
そして
『い、イタイイタイイタイィイイ!』
ぐいと高杉さんの方に無理矢理顔を向けさせられた。
そこには、呆れたように、でも優しく笑っている高杉さんがいた。
「知ってんだよ」
『へっ?』
思わず素っ頓狂な声が出る。
「愛煙者にとって喫煙が苦しいのは俺だって経験済みだバカ。お前ェがなんで苦しんでんのかも全部お見通しなんだよクソガキ」
…え?
高杉さんが、
あの高杉さんが禁煙経験者…?
『…うっそだぁ。
高杉さんが禁煙なんかするタマなわけないじゃん』
「あァ?」
『ギャアアアア!痛い!イタイって!!』
高杉さんが物凄い握力で私の頭を締め付ける。