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隻眼男と白兎

第6章 知らない人について行くのはロクなコトがない


「おや!高杉さんじゃないですかぁ」

店の奥からこの店の主人だろうか、いかにも怪しい商人って感じのオジさんが現れた。

「今日はどういった用件で?」

「弓は置いてあるか?」

高杉さんが店をキョロキョロと見渡して問う。

「弓ですか?
えぇ。ここは江戸一番の武器屋ですからね。
高杉様がお使いになるのですか?」

「いや。
…このチビのだ」

私は小さいことを活かし、高杉さんの後ろに隠れ袖の隙間から様子を見ていたが、
不意に高杉さんが自分の袖を捲るから私の姿は見事にさらされてしまった。


「おや、これは可愛らしいおチビさ…お嬢さんですね」

オイ、今おチビさんって言いかけただろ⁉︎
失礼なオッさんだ!!


「高杉様にでしたら丁度良い物があったのですが…
このお嬢さんに使いこなせるかどうか…」

そういってオッさんが奥から持ってきたのは、深い紅色の実に美しい弓だった。


「つい最近仕入れたばかりでですね、鍛治職人が多くいるとある星一番の職人が作ったものだそうです」

ぅわぁ。綺麗…

「でもこの弓は曰く付きの物でね、それなりの力量のある人にしか引けないんですよ」

オッさんが弦を張り実演する。
ピンと張った弦はオッさんが引っ張ってもびくともしない。
ね?と私たちを見て肩をすくめる。

「オイ、チビ。コレいけるか?」

オッさんから弓を受け取り私に渡す高杉さん。

私が弓を構え弦をゆっくりと引くと、
弦はググっと引っ張られた。

オッさんが驚きの表情で目を丸くする。

高杉さんは当然だと言わんばかりにフンと鼻を鳴らした。

どうやら私はこの弓に認めてもらえたらしい。


「じゃあそういうことだ。いつものように船に届けてくれ」

私たちは某然とするオッさんを置いて店を出た。


それから私たちは、行きと同じ道を引き返し、明るく人で溢れている江戸に到着した。

なんだか久々に太陽を拝んだような気分だよ…

『高杉さん!次はどこ行きますか!』

高杉さんはフッと笑って私の頭に手を置いた。

「俺は用がある。別行動だ。終わったら港の入口にいろ」

ぽんぽんと私の頭を優しく叩き、歩き出す高杉さん。

不意に立ち止まって

「迷子になんじゃねェぞガキ」

今度こそ高杉さんはどこかへ行ってしまった。


…なんだよあれ。

…つ、つつつつつ


ツンデレかこのヤロォオオオオ!!
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