第27章 猫耳は正義
それからしばらく無言で歩く高杉さんについて行き、やっと辿り着いた先は、
江戸の街が一望できる丘の上、
荒れ野にポツンと佇む円柱の石で即席に作られた墓標の前。
私と高杉さんが初めて出会った場所だった。
『此処は……』
「あァ、俺の…俺達の先生の墓だ」
私の呟きに、高杉さんは少し寂しそうな顔をして返した。
高杉さんはさっき買ったばかりの花束をそっと墓標の前に置いて地面に片膝を付く。
「…先生。長ェ事来なくてすまなかったな」
愛おしそうに墓標に手を添え、それから無言でその場に座り続ける高杉さん。
その後ろ姿はあまりにも寂しそうで、哀しそうで、辛そうで、
私は何一つ言葉をかける事が出来なかった。
どのぐらいそうしていたか、高杉さんはやっと立ち上がって私を振り返る。
「此処は俺の大事な場所だ。
だが、ここに来れたのは今日が二回目だ。
俺が幕府をぶっ潰すと誓った日から此処に来るのが怖かったのかもしれねェ。
先生にどやされて、また昔のようにゲンコツを食らいそうで…
…俺の決心が鈍っちまいそうでなァ」
そう言って自嘲的に笑った高杉さんは、いつもの高杉さんらしくない、今にも壊れてしまいそうなほど儚く見えた。
「俺は立ち止まってばかりだ。
かつての友も何もかも捨てて前に進んでいる気になっちゃァいるが、結局俺は、立ち止まって振り返って、過去に囚われてばかりだ。
俺が今日此処に来れたのは…お前ェのおかげだ。
何度転んでも立ち上がって前だけ突っ走ってくどっかの馬鹿のおかげだ。
…だから」
高杉さんはじっと私を見据えて、
「ありがとな」
いつもするように私の髪をクシャっと撫でた。
でもその手はいつもより弱々しい力だった。
『…らしくないですよ高杉さん』
私は高杉さんのその手を取り、ギュッと握る。
『何度立ち止まったって、何度振り返ったって良いじゃないですか。
高杉さんの心に誓った事、
高杉さんの掲げた武士道ってやつが折れなければそれでいいんですよ!
それでも先生のゲンコツが怖いって言うなら』
握った手に力を込めて、
『その時は私も一緒にゲンコツされてあげます』
高杉さんに笑いかけた。
高杉さんは少し意表を突かれたような顔をしていたが、
やがていつものようにククっと喉を鳴らして、