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隻眼男と白兎

第26章 敵の敵はやっぱり敵



「礼ならチサっちゃんに言いな。
俺は彼女に命を救われた。俺は俺の武士道に従ったまでだよ」

ニッと近藤さんに笑顔を向けられて、何だか照れ臭くなって私ははにかんだ。

「高杉。今回は帰らせてやるが…次は容赦しないからな」

「あァ」

再び新選組に背を向け、歩き出そうとする高杉さんの足を、今度は土方さんの私を呼ぶ声が止めた。

「白髪チビ!!」

『まだ言うか⁉︎⁉︎』

私は立ち止まった高杉さんの肩から思わず身を乗り出す。

「お前ェ、名前は?」

土方さんは真剣な目をして私に問い掛ける。

でもそれに対して私は、

『私の免許証見たでしょ?もう忘れたの?アルツハイマーなの?マヨラーなの?』

やれやれといった顔をしてわざとイジワルしてみる。

「マヨラーは関係ねェだろォオオオ⁉︎
この先もずっと白髪チビって呼ぶぞ⁉︎⁉︎」

…いや、それは嫌だなw


私はクスッと笑ってから

大きく息を吸い込んだ。

そして、

『チサです!!鬼兵隊隊士、新 チサ!』

胸を張って、高らかに声を上げた。


急に目覚めてしまった私の力に、私は戸惑いを隠せない。

この力は何なのか
自分は何者なのか
自分は本当に此処じゃない世界の住人だったのか

それすらもわからない疑問と不安で

本当は今にも頭がパニックになりそうだ。


でも

私はチサ。

鬼兵隊というテロリストでいて、この世界では天下の大罪人である集団の一員。

だけど素晴らしい仲間達がいる鬼兵隊の一員。


それだけは

胸を張って言えるんだ。


「次会ったら容赦しねぇからな、チサ」

そう言って、土方さんは私に挑発的な笑みを送る。

『望むところです!!』

私もそれに負けないような笑顔で返した。





私は私が分からない。


でも、きっといつか全部分かる日は来るのだろう。


それが、その真実が、例えとんでもない絶望へ私を堕としてしまうモノであっても。



だから


それまでは笑っていよう。


この最低で最高な仲間達と共に



最後まで笑顔で。



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