第26章 敵の敵はやっぱり敵
「お前ェのおかげでこっちは肝を冷やしたけどな。
…それでも今回はテメェのおかげだ」
「ホント素直じゃないでござるな」
「さっきから万斉、うるせェぞ」
高杉さん…
みんなみんな…
『ごべんなざいィイイイ(訳:ごめんなさい)!!』
皆の優しさが痛かった。
今まで自分を無下にしていた事がどんなに馬鹿な事だったかを思い知らされた。
『高杉さんごめんなさいィイイイ!』
何回も、何回もごめんを繰り返して、
「しつけェ!ウゼェ!」
高杉さんに叩かれました。
皆の優しさが痛かった。
でもそれ以上に
皆の優しさが暖かかった。
『皆、ありがとうゔゔ!!』
まだ涙は止まらなかったが、自分の作れる最高の笑顔でそう言うと、
皆は優しく笑ってくれた。
「オラ、帰んぞ」
高杉さんの言葉に皆今度こそ撤収し始める。
私も高杉さんの後ろに付いて行こうと立ち上がろうとするが、
『……アレ?』
腰が抜けたのか、足に力が全く入らない。
『ちょっ!待って高杉さん!』
そのまま、ふんっ!とか、せいやっ!とか力んでみるけど、足はやっぱり動かない。
これなら産まれたての子鹿の方がまだ上手く歩けるんじゃないかってほど。
「あァ?なんだガキ…腰でも抜けたか?」
高杉さんは振り返って、私を呆れたような目で見ている。
なんだか情けなくて、うんと言えなくて、
そのまま黙って足を動かそうと試みていると、
『わぁっ!』
身体が宙に浮いた。
私の顔は高杉さんの腰あたりにある。
コレは…
これってば………!
俵担ぎだっ!!!
『…高杉さん…私、お姫様抱っこを所望します…』
「あァ?落とされてェのか?」
『うひょーい!私俵担ぎされるの大好きだわーー!!』
そんな茶番を繰り広げながらもゆっくりと歩を進めていた高杉さんの足が突然ピタリと止まる。
そしてゆっくりと振り返った彼の目が捉えるのは、他の隊士同様に床に寝転がった近藤さん。
「今回だけは…礼を言う」
あの高杉さんが、敵に対して素直に感謝の意を述べた事に正直驚いた。
それは近藤さんも同じようで、近藤さんは一瞬驚きで目を丸くさせたが、すぐにフッと笑って言った。