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隻眼男と白兎

第26章 敵の敵はやっぱり敵



『っ!ありがとう!!頼みましたよ!!』

「あぁ」

私は直ぐ側にいる高杉さんの方へ急いだ。

銃じゃ角度的に高杉さんに当たる!

だったら…


私は頭に流れ込んでくる自分の力に身を任せた。

自分で親指を噛み血を出し、その血を高杉さんの向こう、敵へと向ける。

血は私の意思に従い、高杉さんに刀を振り下ろそうとする的へと真っ直ぐに向かう。

そして、

「ぐわぁあああ!!」

敵の肌へと付着した私の血は、敵の体内へと侵食し、その動きを封じた。


「助かった」

バランスを立て直した高杉さんがその敵を斬った。


これが多分、あの人が言っていた、命を削る力なのだろう。

少し使っただけで疲労感パネェわ。


私が肩で息をしていると、目の前で刀を振るっていた高杉さんがチラリと私を振り返る。

「なんだァ?もうへばってんのかよ」

『へばってなんかないですよ。…ちょっとだけ休憩してただけです!』

無理矢理呼吸を正して、再び番傘を強く握り締める。

「ククッ、休憩の多い奴だ。
あと少しだけ、気張れよ」

『もちろんっ!』


それから程なくして、敵は残すところ一人。

「さて、後はテメェだけみてェだが?」

会議の進行役だった攘夷志士を前に高杉さんがその刃を突き立てる。

「ま!待て!鬼兵隊が夜兎を飼っているなんて聞いてないぞ!」

刀を突きつけられ、見苦しくも喚き立てる志士。

「そうだ!オイ!そこの小娘!鬼兵隊なんざより此方側へ来ないか?今よりも待遇良く、褒美もたくさんくれてやろう!」

…いや、全滅を間近な其方側が何を言ってるんだろう?

『だって、高杉さん?
私ヘッドハンティングされちゃいました☆』

とりあえず高杉さんを茶化してみる。

「あァ?なんだテメェ、そっち側に行きてェのか?」

高杉さん、そうは言ってるけど…

口元ニヤけてるよw

『まっさかぁ〜。
残念、攘夷のおじさま。私貴方みたいなむさ苦しい人より、超絶イケメンの高杉さんの方が好みなんで。
それに…』

私は辺りを見渡す。

そこには、傷だらけでボロボロになりながらも私達を見守る仲間達の姿。

『私の居場所は此処だけなので!』


私にとって居心地のいい場所、帰る場所は


高杉さんの、皆のいる

鬼兵隊だけ。



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