第26章 敵の敵はやっぱり敵
「あァ?休んでただァ?
だったらもういっぺん永遠に休んでろこのアホ」
『それ死ねってことですか⁉︎死ねってことですよね⁉︎酷くないですか⁉︎高杉さァアアアん⁉︎⁉︎』
私は高杉さんのそんな辛辣な言葉に喚き立てる。
そんな私の様子をしばらく黙って見ていた高杉さんだが、やがて少しだけ安心したようにフッと笑った。
高杉さんの背中が私の背中に合わさり、私達は背中合わせの状態になる。
「もう、大丈夫か?」
『私はもう大丈夫です!心配かけてごめんなさい!高杉さん…』
言いたかったこと、今ならちゃんと言えるよ。
『ありがとう!』
満面の笑みを送ると、高杉さんは満足そうに私の髪を掻き乱した。
「フンッ。もうウロチョロすんじゃねェぞクソガキ。
…背中、預けたからな」
『ハイ!』
私達は背中を合わせたまま、お互いへと向かってくる敵を薙ぎ払い、弾丸の雨を降らせる。
どこから湧いてくるのか、次から次へと襲いかかってくる攘夷志士達。
私の隙を伺い刀を振りかざすが、
ドンッ
『また子ちゃん!!』
「チサー!援護するっスー!」
新選組が援護に回ってくれたおかげで、狭いこの空間でも大分余裕が出来たらしいまた子ちゃんが私に向かってくる敵へと銃口を向けている。
「余所見ばっかりしてると、俺がその首貰いますぜィ?」
すぐ近くまで来ていた攘夷志士に、私の隣で刀を振り下ろす沖田くん。
皆が私達を助けてくれる。
私は今まで、皆を守ろうと必死になるあまり、一人で突っ走り、皆をまるで頼ろうとして来なかった。
でも違ったんだ。
私にはこんなにも頼もしい仲間がたくさんいるじゃないか。
自分一人が傷付けばいいなんて、もう思わない。
だって、私が傷付くことで悲しみ、傷付いてくれる仲間がこんなにいるのだから。
私は、一人なんかじゃないのだから。
「チサ!晋助様を!!」
また子ちゃんの切羽詰まった声が聴こえた。
慌てて高杉さんの方を見れば、そこにも近藤さんや万斉さんが援護に回ってくれているものの、あまりの敵の数に対処が間に合わなくなっている。
バランスを崩した高杉さんへと一本の刃が向かっていた。
『高杉さんっ!』
私が前にいる敵に銃を撃ちながら叫ぶと、
「行って来い。此処は俺たちが殺る」
土方さんがトンと肩を押してくれた。