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隻眼男と白兎

第26章 敵の敵はやっぱり敵



***


喧騒と、刀がぶつかり合う金属音が聴こえる。


私は再び戻って来た。


ハッと目を覚まして身体に力を入れる。

「チサっちゃん⁉︎」

どうやら近藤さんはずっと私を片手に抱きながら戦ってくれていたらしい。

近藤さんは私の意識が戻ったのを確認すると、心底嬉しそうな、今にも泣き出しそうな顔をして私を見た。

「ありがとう近藤さん」

私が笑いかけると、近藤さんは涙が落ちかけた目を擦り、高らかに叫んだ。

「皆!聞け!!これより新撰組の敵は鬼兵隊以外の攘夷志士共だ!今日この時だけは鬼兵隊を攻撃する事を禁ずる!!」

『…!!近藤さん⁉︎』

私がその言葉に驚いて思わず近藤さんを見上げると、近藤さんはニッと笑い返してきた。

そして私を守るようにして前方で土方さんと沖田くんが刀を構える。

「お前ェには借りができた。
…今回だけお前ェの提案に乗ってやる」

「そーゆー事でさァ。まァ次会った時は容赦しないんで。覚悟しときなせェ」

『土方さん…沖田くん…!』

みんな…ありがとう!


思わず緩む涙腺にぐっと力を入れて、私はそっと近藤さんの腕から離れる。

そして少し遠くに投げ捨てられた弓を拾いあげる。


…もう倒れたりしない。


ふぅ、と深呼吸すれば、この弓の本当の使い方がまるで頭の中に説明書が流れてくるかのように理解出来た。

弓が私の背から流れる血を伝いその姿を変える。

私は番傘へと姿を変えた弓を振りかざし、敵に向かって銃弾の雨を降らせた。

その雨を避けた敵が何人かこちらへ向かってくるが、それを軽々と飛んで避ける。


正直自分でもビックリだ。

あれほどの傷でさっきまでピクリとも動かせなかったこの身体が、今は別物のように軽い。

それにこの傘は…


「おいコラ」

頭上から聴こえた声に顔を上げると、

「くっっそガキ!!」

高杉さんに力一杯のゲンコツを食らった。

『いっだァアアア!ちょっと!何するんですか高杉さん⁉︎こっちは病み上がりですよ⁉︎』

「うるせェんだよ。敵を庇って死んでどうするんだこのクソ馬鹿チビガキ!」

相当怒ってらっしゃる。いつもより暴言が酷い。

『それについてはごめんなさい!!
でも死んでないですー!ちょっと休んでただけですもん!!』
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