第26章 敵の敵はやっぱり敵
そんなの決まってる。
『上等だよ!私は高杉さんを最期まで見届けるって決めたんだから!』
大丈夫。私は絶対死んだりしない。
強く、真っ直ぐにその人を見つめて言うと、
その人はやっと表情を和らげ、優しそうに笑った。
「ではお行きなさい。貴方の守りたい人達の元に。
貴方を待つ人達の元に」
その声を合図にして、私の身体は足元から段々に薄れていった。
この際この人が何者なのかとか、私がなんでこんな力を持っているのかとか、そんな事はどうでもいい。
皆を助けることが出来るなら。
また一緒に笑える日常を送れるのなら。
どんな手にも縋ってやろう。
私が肩まで消えかかった時、その人はまた口を開いた。
「一度力を手にした者はもう二度と戻れない。
その強大な力を過信し、溺れ、闇の中へ身を染める者は後を絶たない。
貴女は…そうはならないで下さいね」
『大丈夫!私はこの力、高杉さんを…皆を守る為にしか使うつもりはないから!』
この想いだけは何があっても絶対に曲げたりしない。
笑顔でそう言うと、その人は心底嬉しそうに笑った。
既に首から下は消え、残る顔部分も徐々に消えていく。
皆、今から行くよ。
口まで消えるその前に、
『ありがとう』
彼へと言葉を残し、
私はその空間から消えた。