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隻眼男と白兎

第26章 敵の敵はやっぱり敵



***

気がつくと辺り一面真っ白な空間に私はいた。

終わりがあるのかもわからない、果てしなく続く白。


「やっと…来ましたね」

突然背後から聴こえた声に私が振り返ると、そこにはあの、いつも決まって夢の中にしか出てこないあの人が立っていた。

『ねぇ此処はどこ?天国なの?
私!早く戻らなきゃ行けないの!』

今もきっと皆死に物狂いで戦っている。

そう考えるといてもたってもいられなかった。

「貴女はまだ死んではいません。此処は、貴女の意識の中。
…と言ってもこのままじゃ貴女は死んでしまいますが」

焦る私と対照的にその人はひどく落ち着いて淡々と言う。

『…まだ死ぬわけにはいかない。
私は皆を助けたい。誰にも負けない強さが欲しい。
そのためにどうしたらいい?』

真っ直ぐとその人を見つめると、彼も私を真剣な眼差しで見つめてきた。

「力を求めますか?」

その言葉と共に頭の中に映像が流れ込んできた。


たくさんの敵を次々に殺していく。

その手は返り血に染まり、視界が赤く染まり、
殺される者の中には恐怖の目を宿している。

その中で、


高杉さんの姿があった。


これはもしかして…あの時の…?

私が天人に捕まって、高杉さんが来てくれた後の記憶?


私は目の前で傷つけられる高杉さんを見て、あの時もひどい憎しみを抱きながら気を失った。

目を覚ましたら、敵は一人残らず死んでいて、私は高杉さんの腕に抱かれていたんだ。


じゃあ、


この視点は



私のもの…?



「これは、貴女が忘れている貴女の記憶」


私は頭を抱える。


嫌だ。違う。

こんなの、私じゃない。

憎しみだけで人を傷つける力なんていらない。


「貴方はこんな力が欲しいのですか?」


私は…


『誰かを…皆を守る為の力が欲しいんだ…!』

強く、叫ぶようにそう言った。

すると、

「では、私が教えましょう」

『へ?』

予想もしてなかった言葉に、私は思わず拍子抜けする。

「ですが」

その人は相変わらず真剣な顔をして続ける。

「貴方のその力は貴方の命を削るもの。
貴方が力を使えば使うほど、貴方の命は散っていきます。
それでも、いいのですか?」

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