第26章 敵の敵はやっぱり敵
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気がつくと辺り一面真っ白な空間に私はいた。
終わりがあるのかもわからない、果てしなく続く白。
「やっと…来ましたね」
突然背後から聴こえた声に私が振り返ると、そこにはあの、いつも決まって夢の中にしか出てこないあの人が立っていた。
『ねぇ此処はどこ?天国なの?
私!早く戻らなきゃ行けないの!』
今もきっと皆死に物狂いで戦っている。
そう考えるといてもたってもいられなかった。
「貴女はまだ死んではいません。此処は、貴女の意識の中。
…と言ってもこのままじゃ貴女は死んでしまいますが」
焦る私と対照的にその人はひどく落ち着いて淡々と言う。
『…まだ死ぬわけにはいかない。
私は皆を助けたい。誰にも負けない強さが欲しい。
そのためにどうしたらいい?』
真っ直ぐとその人を見つめると、彼も私を真剣な眼差しで見つめてきた。
「力を求めますか?」
その言葉と共に頭の中に映像が流れ込んできた。
たくさんの敵を次々に殺していく。
その手は返り血に染まり、視界が赤く染まり、
殺される者の中には恐怖の目を宿している。
その中で、
高杉さんの姿があった。
これはもしかして…あの時の…?
私が天人に捕まって、高杉さんが来てくれた後の記憶?
私は目の前で傷つけられる高杉さんを見て、あの時もひどい憎しみを抱きながら気を失った。
目を覚ましたら、敵は一人残らず死んでいて、私は高杉さんの腕に抱かれていたんだ。
じゃあ、
この視点は
私のもの…?
「これは、貴女が忘れている貴女の記憶」
私は頭を抱える。
嫌だ。違う。
こんなの、私じゃない。
憎しみだけで人を傷つける力なんていらない。
「貴方はこんな力が欲しいのですか?」
私は…
『誰かを…皆を守る為の力が欲しいんだ…!』
強く、叫ぶようにそう言った。
すると、
「では、私が教えましょう」
『へ?』
予想もしてなかった言葉に、私は思わず拍子抜けする。
「ですが」
その人は相変わらず真剣な顔をして続ける。
「貴方のその力は貴方の命を削るもの。
貴方が力を使えば使うほど、貴方の命は散っていきます。
それでも、いいのですか?」