第26章 敵の敵はやっぱり敵
重い一太刀を私の肩から腰にかけて一身に受けることとなった。
「⁉︎チサっちゃん⁉︎⁉︎」
床へ倒れ込む私を近藤さんが受け止める。
私へと攻撃してきたやつは遅れてやってきた土方さんが倒してくれたようだ。
「どうしてだ?敵である君がどうして…!」
『私は…確かに鬼兵隊だけど…ゴリラな近藤さんも…マヨラーな土方さんも…ドSな沖田くんも…皆大好きです…傷付けたくない』
掠れた声で途切れ途切れに自分の思いを伝える。
『それに…
一緒に恋話した仲じゃないすか…ゴリさん』
「⁉︎…チサっちゃん…」
力なく笑いかけると、近藤さんは泣きそうな悔しそうな色々な感情を含んだ顔で私を見ていた。
「オイ!ガキ⁉︎」
遠くから高杉さんの私を呼ぶ声が聴こえる。
私は全然大丈夫。
そう声を出したいのに、私の喉からは掠れた声しか出ない。
少し、血を流しすぎたようだ。
どれほど深くまで斬られたのかわからないが、身体がピクリとも動かせない。
動いてよ。私の身体。
土方さんや沖田くん、そして私を片腕に抱きながら近藤さんは戦っている。
また子ちゃんも室内という銃撃には不利な場所で傷だらけになりながら戦っている。
万斉さんも愛用のサングラスにヒビが入りながら戦っている。
武市先輩なんて、苦手なはずの剣術で必死に戦っている。ホラ、足なんか震えてるよ?
高杉さんは…
目立った血の跡は見つからないが、その服はボロボロで斬られた跡がいくつか見て取れる。
皆、まだ戦っている。
私だけここでギブアップなんて嫌だ。
でも、私の身体は無情にも動いてくれない。
そんな自分に腹が立つ。
私の大切な人達を傷つける奴らに憎しみが芽生える。
頭が、痛い。
私が強い憎しみを抱いていると、それに呼応するかのように私の頭痛は酷くなる。
もういっそ、この感情に体を預けてしまえば、
この痛みからも、この私のドロドロな感情からも楽になれる気がした。
でも、
この感情に私を預けてしまったら最後、
私は皆を傷付けてしまう予感に似た確信を抱いていた。
もう元に戻れなくなる。
そんなのは嫌だ。