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隻眼男と白兎

第25章 世界中いつも誰かがハッピーバースデイ


自室へと辿り着き、敷いたままの布団へチサをそこに寝かせる。

「お前ェは何もくれねェのか?」

スヤスヤと眠るガキの前髪を梳きながら呟くと、ガキはうんと唸って薄眼を開けて、

ガバッと起き上がった。

『え⁉︎私寝ちゃった⁉︎高杉さんの部屋⁉︎
何コレ頭いってェエ!』

起きた途端喚きだしたかと思えば痛みに頭を抱える。

「飲み過ぎだテメェは」

と言っても俺も柄もなく酒酔いで頭がガンガンしやがるから人の事は言えねェんだけどよ。


ガキはうぅっと呻きながら上目遣いに俺を見る。

『ごめんなさい高杉さん。なんかとんでもない事になっちゃって…』

そう心底申し訳なさそうに謝るガキ。


まァ確かに騒々しい宴会だったが…

「たまにはこんな宴会も悪くねェ」

そう言って、俯くガキの頭にポンと手を乗せると、ガキは嬉しそうに笑った。

その笑顔になんだか満足した俺は懐から煙管を取り出し、何時ものお気に入りの窓辺へと向かおうとすると、

『あ!ちょっと待って!!』

突然ガキが慌てたように叫んだ。

そして、すぐ隣の自分の部屋まで駆け出し、ものの数秒で帰ってきた。

『うー頭痛ぁ…
高杉さん、ハイこれ』

いきなり走ったことでなお一層酷くなった頭痛に顔を歪めながら俺に綺麗に包装された長細い箱を手渡してきた。

「何だコレ?」

箱を開けてみると、

『高杉さん、ハッピーバースデー』

そこには煙管が収まっていた。

真紅に金色の蝶の柄が散りばめられた煙管。

俺の好みドンピシャだ。


いつもの煙管を置き、ガキから貰った新しい煙管に火を灯す。

一吸いして、煙を吐き出す。

「うめェ。
…ありがとな」

こんな風に素直に礼を言うのは少々照れ臭い。

だが、ガキは俺の言葉に満面の笑みを返したから、

たまには悪くはねェかもな。


「お前ェの誕生日はいつだ」

不意にそう尋ねると、ガキはキョトンとアホ面で答える。

『4月16日ですけど…』

「じゃあ…
そんときゃ今度はお前ェの誕生日を祝ってやるよ」

『え⁉︎本当ですか⁉︎え⁉︎何コレドッキリ⁉︎』

ドッキリじゃねェよ馬鹿ガキ。

あまりの驚きっぷりに思わず俺の口角が上がる。


祝ってやるよ。

お前ェが此処に居て、俺が此処に在る限り。


日が昇り始めた空を見上げ、

その空へ煙を一つ吐き出した。

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