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隻眼男と白兎

第25章 世界中いつも誰かがハッピーバースデイ



あまりの酔っ払った態度にどんな可笑しな歌を歌うのか不安も覚えたが、どうやらそれは杞憂だったらしい。

一度歌を奏でると、それは何時ものように変わらない澄んだ声で紡ぎ出される。

何処かで覚えのある旋律だった。


…ああ。

なるほど昨日万斉が弾いていた曲はコレだったのか。

時折優しく、かと思えば跳ねるような旋律がなんともガキらしい歌だ。


『作詞作曲万斉さんれす。
ご静聴ありがとうございまひたー』

歌い終わりぺこりと頭を下げると、その場には歓声が沸き起こった。

「おまん、本当に歌が上手いぜよ!ただのこんまい女子じゃなかったのじゃな!」

『こんまいは余計ですぅ〜。
高杉さん!どうれしたー?』

大勢に褒められて嬉しいのか、ただ酔っ払ってるだけなのか顔を少し赤らめながらふにゃっと笑って俺に問い掛ける。

「あァ。良かっ」

ガシャーン

言い終わる直前で部屋の窓ガラスが割れ、また招かれざる客がやって来やがった。

「チサーーー♡」

『げふっ⁉︎』

そいつは窓を割ったことも無視してガキへと勢いよく抱き着いた。

「オイ、テメェ…」

『おいコラ、バ神威。お前を呼んだつもりはないんだけど?』

俺が言うよりも早く、ガキが抱き着いてきている馬鹿へ向かって睨みをきかせる。

「折角の久々の登場だっていうのにチサ冷たくないー?」

当の本人はガキの睨みも物ともせずニコニコと笑っている。


ていうか、

ソイツは俺のだ。

気安くくっついてんじゃねェよ。

「オイ、馬鹿兎。ソイツから離れろ」

「あぁ、晋助、久しぶりだネ」

ダメだコイツ、話が通じねェ。

「良い度胸じゃねェか。
今ここで二度とそのツラ笑えないようにしてやろうか」

「やれるものならやってみなヨ。俺負けないヨ?」

『ちょっ、ちょっと!』

殺気立つ俺と馬鹿兎に、オロオロと慌てふためくガキ。

と、そこに、

バンッ

「オイコラ!このスットコドッコイ!!」

招かれざる客三人目がやって来る。

「あ、阿伏兎ー」

馬鹿兎と同じく、宇宙海賊春雨第七師団副団長、兼馬鹿兎のお目付役の阿伏兎がズカズカと馬鹿兎の方へと歩み寄ってくる。

「このスットコドッコイ!急に船からいなくなったと思ったらこんな所まで来て!何やっちゃってんの⁉︎」


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