第25章 世界中いつも誰かがハッピーバースデイ
「お前ェ、いつも鬱陶しいぐらいに俺の睡眠を邪魔するくせにどういうつもりだ?」
言いながらガキの頭を鷲掴めば、ガキは悲鳴をあげながらその手から逃れようと身をよじる。
『ギャー!!痛い痛い!頭!頭パーンってなるゥウウ!』
「うるせェんだよ。
大体なんだコレ、誰かの誕生日か何かか?」
顎でケーキの方を指せば、あれだけ暴れていたガキが途端に青ざめた顔になる。
『えーっと、コレは、ですねぇ…』
慌ただしく目を泳がせる。
そして、
『…世界中、いつも誰かがハッピーバースデイです。(キリッ)』
何故か真剣な顔つきをして支離滅裂な事を言いやがった。
「だ、か、ら!鬼兵隊の誰かが誕生日なのかって聞いてんだよ!」
『うぎゃァアア!』
ガキの頭を鷲掴みながらその手をブンブンと揺さぶる。
『とにかく!あと少しで準備出来るんで!高杉さんはもう少し寝てて下さいィイイ!』
「俺はお前ェのせいで腹が減ってるし、お前ェのせいで微塵にも眠くねェんだよ!」
『理不尽んんん!!』
ガキは相変わらずうるさく喚いていたが、突然俺の手をガシッと掴むと、その持ち前の馬鹿力で俺の手を無理矢理引っぺがした。
コイツが俺に対して馬鹿力を発揮したのは初めてだ。
思わず初めての反抗期に一瞬呆気に取られる。
が、それがいけなかった。
『高杉さん!ごめんなさいっ!!』
ガキは涙目でそう叫ぶなり、呆気にとられた俺の後ろに回り込んで、
バシッ
首の後ろに手刀を食らわせられた。
途端に前のめりに倒れる俺。
それを俺を気絶させようとした本人に受け止められる。
『ごめんなさい、高杉さん…。でもこうするしかなかったんです…。
…それにしても、15時間は眠り続ける眠り薬をせっかく盛ったのに、予定より起きるの早いだなんて、流石というかなんと言うか』
薄っすらと残る意識が消えかかる中、そんなクソガキの声が聞こえてきた。
そういえば…昨日寝る直前、ガキが珍しく茶を淹れてきたな…。
あの時は気が効くと思ったが…
なるほど、そういうことか。
目が覚めたら覚えておけよ。
このクソガ………
そうして俺の意識は完全にそこで途切れた。