第24章 計画はご利用的に!!
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鬼兵隊に着いたのはすっかり日が落ちてからだった。
拙者は帰って早々に自室に篭り、晋助への贈り物を考えながら片手間に思いついた曲を三味線で弾きながら仕上げていた。
「万斉、何だお前ェ、やけに上機嫌じゃねェか」
熱中していて気付かなかったが、何時の間にか晋助が部屋の入り口に寄りかかっていた。
「どうした?何か用か?」
「いや、あまりに面白い旋律を弾いているから少しばかり気になっただけだ」
そう言って晋助はククっと喉を鳴らして笑うと、入口の方で胡座をかいて愛用の煙管を取り出した。
オイ、この部屋は禁煙でござる。
そんな勝手な奴には、少しばかり意地悪をしてやろう。
「チサとデートに行ってきたでござるよ」
「あ?何だと?」
チサの名前を出した途端にコレだ。
先程まで柔らかかった表情が途端に険しく変化する。
そして拙者を面白くなさそうにギロリと睨んだ。
「…冗談でござるよ。
ただチサと一緒に買い出しをして来ただけでござる」
「…それをデートって言うんじゃねェのか?」
相変わらず面白くなさそうに、そうふて腐れたように呟く晋助に思わず苦笑が漏れる。
まったく…。
そんなに嫉妬するぐらいなら、チサに対するお主自身の気持ちにいい加減気付いてもいいのではないか?
本当に不器用な男だよお主は。
「安心しろ晋助。
拙者はチサに対してお主のような感情は持っていない」
きっとお主がチサに抱いているであろう感情は深い愛情。
恋心とでも言うのかもしれない。
そんな感情がチサに芽生える事はないだろう。
なんせチサには振り回されっぱなしだし、
馬鹿だし、暴走すると人の話を聞かないし…
何よりチサには晋助がいる。
チサは晋助を必要とし、晋助もまたチサを必要としている。
そんな二人の間に割って入れるほど拙者は空気が読めないわけではないでござるよ。
チサをイメージして作った旋律に耳を傾ければ、自然と今日1日でたくさん見たあの笑顔が思い浮かぶ。
だが、
そうだな…
世話の焼ける可愛い妹のような存在
そう思うぐらい許してくれるか?
晋助。