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隻眼男と白兎

第24章 計画はご利用的に!!


「ハッ!丸腰のテメェに何が出来るって言うんだよ!」

スリAが大きく刀を振り上げる。

拙者は溜息を吐きながら肩にかけていた三味線を取り出す。

「そんな三味線ごときで受け止められるなら受け止めてみろよ!」

スリAは馬鹿にしたように笑うとその頭上に構えた刀を振り下ろす。


「……アレ?」

スリAの動きが拙者に当たる直前でピタリと止まる。

自身も突然体の自由が奪われた事に驚いているようだ。

動かない両手を無理矢理動かそうと力を入れるが、


無駄だ。

「三味線ごときで何が出来るかって?」

スリAには拙者の三味線から伸びた弦が身体中に巻き付いているのだ。

拙者は動かない敵を前にゆっくりとした動作で三味線の裏に仕込んである刀を取り出す。

「ま、待てっ!財布も金も全部返すから!命だけは!」

スリAが顔を真っ青にして懇願するが、

「もう遅いでごる。

…拙者はイラついてんだよ」

刀を振り下ろした。


「剣筋は中々でござる。貴様も武士の端くれならその根性鍛え直してスリからは足を洗う事でござるな」

地面に倒れ顔を引き攣らせながら意識を失ったスリA。

安心するでござる。峰打ちでござるよ。


ふぅ。
呆気なかったが拙者の方は方がついた。

チサは…

『ぬおおおおお!!』

近くにあった標識をどうやったのか引っこ抜き、スリ達を薙ぎ払っていた。


…標識引っこ抜くとかどこぞの平和島◯雄でござるか。あの常識外れな馬鹿力…。


『あ!万斉さん終わりました?』

拙者がポカンと呆気にとられていると、満足そうに笑いながらチサが近付いてきた。

「…ソレ、元あった場所に戻しておきなさい…」

『あ!ハーイ』

思い出したようにチサは標識をガンッと地面に突き立てる。

ホントお主の体はどうなってるでござるか…。


スリ騒動もひと段落して息を吐く暇もなく辺りに野次馬が群がっている。

「警察が来たら厄介でござる。早々に立ち去るでござるよ」

拙者達は逃げるようにその場を後にした。


早足で歩を進めながら、その後ろを小走りで付いてくるチサをそっと見る。


拙者の頭二つ分ぐらい低いその背丈に、華奢な身体つき。

その馬鹿力を生み出す筋肉は一体何処から生まれているのか。
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