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隻眼男と白兎

第24章 計画はご利用的に!!



「どうだ?落ち着いたでござるか?」

窒息寸前なチサを外にあったベンチに座らせてやると、あれほど騒いでいたチサもやっと大人しくなった。

『さっきは取り乱してすいません…』

すっかり財布をなくしたショックで落ち込んでいるようだ。

「で、いつから財布が無いか覚えてないでござるか?」

『確か…スーパーでお買い物をした時はありましたよね?商品買ったし…』

「その時にスーパーに忘れた可能性は?」

『いや、その後財布はちゃんと帯の中にしまったのは覚えてます。
もし落としても気付けるように鈴付けてるんですけど…』

鈴?

…あぁ、確かにチサと街へ出かけた時、チサからチリンチリンと心地よい鈴の音が鳴っていたな…。

拙者も記憶を遡る。


そういえば…

鈴の音が聞こえなくなった直前、チサは確か男とぶつかっていたな…。

もしや…

いや、まさかな。


ふと近くにあった掲示板に貼り付けられている紙を見て、拙者の推測は確信に変わった。

「…チサ、もしかしてお主スリにあったのやもしれぬ」

『え?』

驚いた顔をして見つめてくるチサの目線を拙者の指に集め、掲示板を指差す。

そこには、

《最近この辺りでスリの被害が多発しています!財布・バック等はしっかり持ちましょう。
被害にあった方はこちらまで○○○-□□□□
新選組》

そう書いた貼り紙が一際目立って貼り付けられていた。

『す、スリィイイイ⁉︎』

「お主が男とぶつかったあたりから鈴の音がしなくなったのでな。多分そうだと思うでござる」

スリとなってはもう財布は諦めるしかなさそうだ。

この人通りの多い江戸の町で人探しなど不可能だろう。


拙者はそう思っていたが、

『くっそ!あんにゃろう!!
私の財布をスるなんていい度胸してるじゃないかァアア!とっ捕まえて警察に突き出してやるゥウウウ!』

そう叫び勢いよくベンチから立ち上がると、拙者の存在も無視し走り出していった。


…はぁ。

今日は彼奴に振り回されてばかりでござるな…。


拙者は一つ重い息を吐き、チサが消えていった方向へ追いかけた。

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