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隻眼男と白兎

第24章 計画はご利用的に!!



結局、チサの誘いも断れず、半ば強引に江戸の町へと連れて来られた。

前を歩くチサが辿りついた先は“大江戸スーパー”。

『まず、ここでケーキの材料を買います!』

そう言って意気揚々とカゴを持ってお目当ての果物コーナーへと向かって行く。


それにしても…

人が多い!!

拙者あまり人混みとか得意ではないのでござる…。


「チサ!ちょっ!」

人混みへと流されていく拙者と、反対にズンズンと進んでいくチサ。

何故ゆえこんなにも人で溢れているのか。

辺りを見渡せば、強面のご婦人や何やら殺気立っている人達が大勢チサが目指している果物コーナーへと歩いている。


そしてその理由はすぐに知る事となった。


《大変長らくお待たせしました!》

突然、小気味好い音楽の後に店内にアナウンスが入る。

《これより果物コーナーにてタイムセールスを開始します》

そして、ジリリリと開始を告げるベルが鳴り響いたと思えば、周りにいた屈強な女達は一目散に果物めがけて駆け出した。

女達は雄叫びを上げながら人を押し退け果物を袋に詰めていく。

まるで獲物に群がる野獣のように、彼女たちの魂はハードロックを奏でている。


そしてチサはというと、

『うおォオオオオオ!!どけぇエエエエ!!
この苺は私のだ!何人たりとも渡しはせぬぞォオオオ!!』

耳を塞ぎたくなるほどのヘヴィメタル。
曲に例えるなら、そう、かの有名な“チルドレンオブボトム”であろうか。


…。

うん。
ちょっと恥ずかしいから他人のフリをしよう。(遠い目)


そそくさとその場から離れようとして、

『ちょっと万斉さん!逃げる事は許さぬぞ!!
お一人様2パックなんだから手伝えェエエエエエ!!』

彼奴の目は頭にでも付いているのだろうか。

拙者から背を背けながらも大声を張り上げる。

若干殺気が満ちているような気がするのは気の所為だろうか。

最早普段ついているはずの敬語すら忘れている。


そんなチサに圧倒され拙者は、

「あ、ハイ。ごめんなさい」

としか答えることが出来なかった。

というか、許されていなかった。


渋々前方に群がる人々を押し退けて、拙者もまたその激しい戦場へと進んで行ったのだった。
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