第22章 アニメにも原作にも譲れない何かがある
「じゃあ何故世界は元に戻らないんだ」
「あ!トラックだ!」
新八くんが叫んだ先に目を向ければ、あとほんの数秒後に源外さんに接触しそうなほどに迫り来るトラックがあった。
それよりも…
私はというと、源外さんが高々と掲げたモノに目が釘付けになっていた。
「おそらくじーさんは、修理が完了した喜びで道に飛び出し、アレに撥ねられ、死んだってわけだ。おそらくせっかく直した時計もその時壊れちまったんだろう」
ねぇ。みんな?
どうしてその源外さんの手に握られたものに気付かないの?
「じゃあ!ここで源外さんを救えば!修理した時計も手に入る!」
馬鹿なの?
「やったネ!これで…『それ…時計じゃないよ…』
「「え…」」
源外さんを移動させようと持ち上げた新八くんと神楽ちゃんの動きが止まる。
その視線は源外さんの手に持つ大きな(多分)鼻くそに向かう。
「ただの鼻くそじゃねェかァアアア!」
「長えこと鼻ほじってたと思ったら、どんだけ大物掘り当ててんだこのジジィイイ!!」
『ま、まぁとにかく、これで源外さんの死も回避できたし、鼻くそも始末できたし、これで心置きなく時計に集中出来るでしょ…。神楽ちゃんお願い』
カチッ
通行人A「可哀想にねぇ」
通行人B「何でも、運転中に何かをフロントガラスに叩きつけられ、それで電柱に激突して…」
…。
チーン
「「トラックの運転手、長谷川さんだったァア!」」
今度は源外さんの家の隣の電柱辺りに、たくさんの花に囲まれた長谷川さんの遺影が飾られていた。
「なんてこったァア!源外さんが助かったと思ったら!今度は代わりに長谷川さんがァア!」
「テメェが鼻くそトラックに投げつけたりするから!こんな事になるネ!!」
「あんなモンスターを生み出したやつに文句いってくんない⁉︎」
新八くんと神楽ちゃんの言い争いが始まる中、銀さんは冷静に時間を元に戻す。
「落ち着け!時間を戻し、もう一度鼻くそを…」
バンッ
と、近くにあったゴミ捨て場に投げ捨てた。
「今度はちゃんとゴミ捨て場に捨てれば済む話だ…。
よし!これで今度こそ大丈夫だ!」
カチ
…
通行人A「かわいそうにねぇ」
通行人B「何でも、電柱の下で眠ってたら突然何かを顔に叩きつけられて、それで窒息して…」
………
チーン