第21章 始業式HRまで闘いは続く
『高杉さん!アレ!凄いね!綺麗だね!』
目の前に映る花火にはしゃぐガキ。
はしゃぎ過ぎて、
『うぎゃあっ!』
体がグラつき木から落ちそうになる背中をそっと支えた。
「あんまはしゃぐな。落ちるぞ」
ホラ言わんこっちゃない。
本当にガキはガキだな。
ガキが何を思ったが咄嗟に頭に付けている面を顔に持って来ようとする。
「今はソレやめろ」
面を持つ手を掴んで阻止する。
今それをつけられたら笑っちまって花火どころじゃなくなんだよ。
俺はまた花火を見上げる。
隣には嬉しそうなガキの笑顔。
あァ。この場所に連れてこれて、ガキの反応は思った通りで、
思わず満足感に口角が上がる。
その時、
『好きだなぁ』
ポツリ、ガキの呟いた小さな声がやけにはっきりと俺の耳に届く。
「あ?」
いきなりの言葉に、突然だった俺は思わず驚いた顔をガキへと向けてしまった。
『え⁉︎あ!あー!花火!花火がですよ!
そう!花火!あー、私花火大好きだなぁと!』
「そうか」
あぁ。なんだ。
花火の事か。
…なんだってなんだ?
何を俺はガッカリしてんだ?
全くコイツといると調子崩されっぱなしだ。
俺はクスリと笑ってまた空を見上げる。
そうだ。
少し意地悪してやろう。
「…俺も好きだぜ?」
『え⁉︎』
「…花火が」
フッ。
何やってんだ俺は。
しばらく横に視線を感じていたが、ガキは私用とかほざいてまた面を顔へと降ろしてしまった。
私用ってどんな私用だよ(笑)
俺は気付かれないようにそっと隣のチサを見る。
面の下の表情はわからねェが、その小さな面についた穴で花火を真っ直ぐに見上げている。
チサの真っ白な髪に色鮮やかな花火の色がまるで鏡のように映りこむ。
柄にもなくそれを綺麗だと思う。
あァ。
今だけはその面を外さないでくれ。
柄にもなく顔の体温が上がり、少し赤みのかかっているであろうこの顔を見られたりでもしたら恥ずかしくて死んじまうからな。
だから、
俺がいつも通りになるまで、
もう少しだけこのままお前ェの隣に居させてくれよ。