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隻眼男と白兎

第21章 始業式HRまで闘いは続く


部屋から出て真っ先に高杉さんへと浴衣姿をお披露目に行けば、

「馬子にも衣装じゃねェか」

と高杉さんが(多分)褒めてくれたから良しとした。



旅館から出て海とは反対方向に少し歩けば、
そこには大きな神社と、沢山の人だかりと、沢山の出店が並んでいる。

そんな祭り独特の賑わいの中で私と高杉さんは浴衣姿で並んでいる。


高杉さんの方はやはり予想通り、いつもとさほど変わらない紫に金の蝶の刺繍の入った男性物の浴衣だった。

私は内心でガッツポーズを決めながら、女将さんのためにももう何枚もこっそり隠し撮りをしている。


それにしても…

人が多い!!

「オイ、はぐれんな…」

高杉さんが振り返ったのが見えたが、私は人ごみに流されている最中です。

人に流され押し出され、とうとう高杉さんを見失ってしまった。

私は人混みの少ない場所でキョロキョロと高杉さんを探す。


さて、どうしたものか。

いくらなんでもこの歳で迷子センターに行くのはさすがに恥ずかしいし、高杉さんの顔に泥を塗る事にもなるよなぁ…


私が一人うーんと思案していると、

いきなり誰かにぐいと手を引かれる。

『高杉さん?』

目の前にはあの人混みを急いで掻き分けてきたらしい、せっかくのさらさらキューティクルがボサボサになってしまった高杉さんがいた。
その手はしっかりと私の手を握っている。

『高杉さん!手っ!手が//』

「《保護者の方はお子様の手をしっかり握ってはぐれないようにご注意下さい》」

高杉さんの声と丁度アナウンスの声が重なる。

「お子様は大人しく大人に手を引かれとけ」

そう言って高杉さんは意地悪く笑った。

『何ですか何ですか!高杉さんだって背は低いほ…』

ゴンッ

言い終わらないうちに高杉さんからの怒りのゲンコツを頂きました☆


「ほら行くぞ」

高杉さんが私の手を引く。

私の歩幅に合わせてくれているのか、いつもよりゆっくりなその歩みに私もついていく。


こうして歩いていると側から見たらこ、恋人同士とか見えちゃってるのかな⁉︎

思わず頬が緩みそうになるのをぐっと我慢する。

「何ニヤニヤしてんだ気持ち悪い」

おや、表情に出てましたか。
いけないいけない。


頬にグッと力を込める。

が、

あぁ。

無理だこりゃ。


「ちょっと高杉さんここで待ってて下さい」
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