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隻眼男と白兎

第21章 始業式HRまで闘いは続く


それを高杉さんから受け取り、口へと運ぶ。

…美味しい!

私は夢中で食べ始める。

そんな私を見て高杉さんはやれやれといった風にそっと溜息をついた。

「ソレ食ったら出かける用意をしとけよ」

『もがぁーい(はーい)』

「食ってる時にしゃべるんじゃねェ。汚ねェだろ」

『ほふぇんふぁふぁーい(ごめんなさーい)』



しっかりとおにぎりを完食した私はとりあえず自室へと戻る。

しかし、

はて。用意って何を用意したらいいんだ?

せめて何処に行くのがぐらい聞いとけば良かったな…

私がとりあえず財布を用意し…首を傾げていると、

「ちょっとアンタ」

ピシャリと襖が開いたかと思えば、部屋へと入ってきたのは女将さん。

『え?何?女将さん…って、わぁ!!』

女将さんは私の背後に回り込んだかと思うと、いきなり私の体のサイズを測り始めた。

そして訳が分からないうちに着ている服を剥ぎ取られ新しく何かを着せられる。

「やっぱり私の見立てはバッチリね」

終わったらしい女将さんは満足気に腕を組んで私を見る。

部屋にあった姿見で確認すると、

『浴衣?』

「花火大会と言えば浴衣でしょう?」

いつの間にかしっかりと化粧まで施されている。

てか、そうか。私これから花火行くのか!
初めて知ったわ!←

『女将さんさすがお化粧上手いね』

「アンタ、ガキのくせに顔は良いんだから普段からちゃんと化粧ぐらいしなさいよ」

『ケショウッテナニ?オイシイノ?』

「…それ嫌味?」

ジト目で睨んでくる女将さんに思わず苦笑を向けた。


「べ、別にアンタの為を思ってそれ貸してあげるわけじゃないんだからねっ!此処はそういうサービスがあるだけなんだからね!」

ふふ。女将さん嘘ばっかり。

『女将さん!』

私は部屋から去ろうとしている女将さんを呼び止める。

何よ、と振り返る女将さん。

『ありがとう』

私が笑顔を向けると、女将さんは照れ隠しに顔をうつむかせ、

「フン、まぁ、上手くやんなさいよ」

それだけ言って部屋から出て行った。

つ…

ツンデレかよォオオオオ!!!


私はもう一度姿見の前でくるりと一回転する。

高杉さんからもらった大事な髪飾りを付けて、

『よしっ』

私は部屋を出た。


高杉さんの紫に蝶に良く似合う淡いピンクに花模様の浴衣を着て。
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