第21章 始業式HRまで闘いは続く
途中夜中にもかかわらず出歩くお客様に、私を後ろに従えながらも愛想よく挨拶を交わす女将さん。
食事の時も思ったが、こうしていると本当に美人な人だと思う。
チサ推定30代前半のその人は、
目鼻筋が通った綺麗な顔に、ピンと張った姿勢。
さらに凛と澄んだ声に、
「フフ。おやすみなさい」
この笑顔ときたものだ!
これは高杉さんですら魅了されてしまうかもしれないし、だからこそ私はあの時この人に嫉妬していた。
しかし、なんだってこんな人が私を睨みつけ、さらに私は呼び出しなんかくらっているんだろう。
何か悪いことしたかな…?
うーんと、一人首をひねる。
…ハッ!
アレか⁉︎
壁に刀刺しちゃったやつか⁉︎
思い当たる節を発見してしまった私は、これからいくら請求されるんだろうとか、この先待つであろうお叱りに震えながら黙って女将さんの後をついていく。
そして、
女将さんが立ち止まったのは旅館のはずれにある庭園のような場所だった。
辺りに人の気配はない。
まさか本当にボコられる⁉︎⁉︎
女将さんが私の方へと振り返る。
また鬼の形相である。
「アンタ!なんなのよ!」
『ヒィ!ごめんなさいごめんなさい!壁の事は本当に申し訳ないですー!!』
怒鳴られた条件反射でペコペコと頭を下げる。
アレの原因は私ではあるが、やったのは高杉さんなんだがな!!
恐る恐る顔をあげると、
女将さんは、何言ってんのコイツ、って顔をして私を見ていた。
「それは高杉様の顔に免じて私がなんとかするから問題はないわ」
それを聞いて私はホッと胸をなでおろす。
でも、
じゃあなんで私呼び出されてんの?
ますますわからない。
私が首を傾げていると、
「はぁ。なんでアンタみたいなアホくさいガキが高杉様と一緒に寝てるのって聞いてるの!!」
…は?
「おかげでせっかく今日は高杉様がいらっしゃってるのに私の《高杉様写真集》が満たされないじゃないのよ!」
…えーっと。
ぱーどぅん?
私が呆気にとられポカンとしていると、ますますヒートアップしていく女将さん。
「アンタなんて去年までいなかったくせに!いきなりなんなのよホント!」
ドンっ
『ヒィ!』
私は今、女将さんと木に板挟みにされた状態である。
これぞまさに壁ドン☆