第21章 始業式HRまで闘いは続く
海から戻ってきた私たち鬼兵隊は、はじめに荷物を置いた旅館へと戻り、各々夕食が用意されるのを待っていた。
先に温泉に入り疲れを癒す者、
自室にてテレビを見る者、仮眠を取る者、
そんな中私は、
「オイ待てっつてんだろ(怒)」
『待たないって言ってんでしょォオオオ(泣)』
旅館の廊下を猛スピードで逃げ回っていた。
なぜこんな事になっているかと言うと、数十分前に遡る。
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私は助けてもらったお礼に高杉さんの部屋で高杉さんをマッサージしていた。
「…たく。お前ェは次から一人で海はいるんじゃねェぞ」
『はい…』
サスサス
「あと、無防備な格好で外に一人で出るのも禁止な」
『ウィッス…』
ぐいぐい
「ボーッとしすぎなんだよテメェは」
『おっしゃる通りでお母サン…』
トントン
「…まぁ、おかげでイイもん貰えたから今日のところは良しとしてやるよ」
『…ん?』
なんか私あげたっけ?
今日は特にお菓子も与えてないはずなんだけど…
私が首を傾げていると、
高杉さんは振り向いて、そっと私の唇に手を当てニヤリと笑う。
そういえば…
私が溺れた時、確かに口になんか当たった気がする…
そんで私は高杉さんに抱き抱えられてて……
ボンッ
私は湯気が立ちそうなほど顔を真っ赤にさせて、口を隠しながら物凄いスピードで後ずさった。
『な!まさか!まさかまさか高杉さんんんん⁉︎』
「ん?」
高杉さんは相変わらずニヤニヤと楽しそうに私を見つめる。
『まさか!その……私に……』
…キ、キキキキキス、いや、人口呼吸、
その先を言うのが恥ずかしくて思わず口籠る私。
しかし高杉さんはしれっと、
「あァ、キスした」
『○△☆□%〜⁉︎⁉︎⁉︎』
私が声にならない声をあげている中、高杉さんはまた面白そうに腹を抱えて笑っている。
「仕方ねェじゃねェか、あの時はああしなきゃお前ェ死んでたぜ?」
それはそうなんだけど…
私は睨みつけるように高杉さんを下から見上げる。
精一杯の威嚇のつもりだが、
効果はいまひとつのようだ。
高杉さんは相変わらず口を押さえながら顔を真っ赤にして睨みつける私にずいと近づき、
「キスぐらい慣れてないと、この先大変だぜ?」
意味深に笑い、麗しき高杉さんの顔が目の前に迫る。
その唇までのキョリ僅か10センチ。