第20章 やべぇ!宿題やってねぇ!って気付くのはだいたい始業式前日
「お前は俺が守ってやる。そう言ったろ?」
高杉さんは私を片手で抱き抱えたまま、空いた片手で私の頭を撫で優しく笑う。
「まァ、確かにお前ェが鈍臭ェ所為で疲れたからな。
帰ったらまた仕置きでもくれてやるよ」
冗談混じりな言葉を貰い、私の沈んだ気持ちも軽くなる。
「ただ鼻血は…日頃からなんとかしろ」
『…はい』
そして私達は顔を見合わせて笑った。
「掴まってろよ」
高杉さんはそう言うと私を後ろに移動させ、まだ力の入らない私をおぶる形で岸へと運んでいく。
なんだか、今日は高杉さんに助けてもらってばっかりだな…
トンと肩に頬をつけると、高杉さんの暖かい体温が直接伝わってくる。
高杉さんの温もりはどこか安心する。
足がつくぐらいの浅瀬に来て、高杉さんから離れ私は自力で歩こうとするが、
コケッ
『あだっ』
見事に転んで派手に顔面を水面に打ち付けてしまった。
それを見て高杉さんは呑気に笑う。
私は結構痛いけどな!
「ククッ、ホラ、まだフラつくんだろ?おぶってやるよ」
『そ、そんな!大丈夫です!』
これ以上は私の心臓が保たない!!
私が手をブンブンと振って暴れると、
「暴れるならこうだ」
そう言って高杉さんは私をぐいと持ち上げ、
俵担ぎされました。
そのまま海を上がると、私を心配したまた子ちゃんやたくさんの人たちが私達を取り囲んだ。
また子ちゃんは私が高杉さんから降ろされるなり私に抱きつき、土方さんは何故かバツが悪そうに私に頭を下げた。
結局、高杉さんが試合放棄をしたことにより、この勝負は引き分けという形でおひらきになった。
「今日は楽しかったでさァ」
「君達もなかなかやるな!」
「主らもやるでござる」
敵同士だというのに皆どこか楽しそうに笑っている。
新選組の面々が帰っていくのを座りながら手を振って見守っていると、高杉さんが私の隣にそっと腰を下ろした。
ちらりと高杉さんの方を見ると、
その顔はどこか楽しそうに、しかしどこか寂しそうに微笑んでいた。