第19章 お家に帰るまでが任務
『う………』
少ししてガキが唸り声を上げ、
俺は咄嗟に、落ちていた刀を手元に寄せた。
『あ…れ?高杉…さん?』
目を覚ましたガキは何時ものアイツだった。
あの時感じた殺気も恐怖も今はまるでない。
俺は思わず安堵の息を吐く。
ガキはどうやら何も覚えていないようで、辺りを不思議そうにキョロキョロと見渡していた。
『これ全部高杉さんが?』
お前がやった。
…なんて言ったらコイツはどんな顔をするんだろうか。
「…ああ」
そう考えたら思わず嘘をついてしまっていた。
『やっぱり凄いや高杉さんは』
ガキはポツリとそう言って立ち上がる。
『こんなとこ早く出ましょ!また子ちゃんも心配してるだろうしね!』
俺に背を向けたまま陽気な声を上げるが、
無理してんのはバレバレなんだよ。
一足先に行こうとしているガキの手を掴んで振り向かせると、その大きな瞳からはまた大量の涙が溢れ出ていた。
「…怖かったか?」
俺の問いかけにガキは首を横に振る。
「確かにすごく怖かったよ。
…でもコレは怖くて泣いてるんじゃないんです。
高杉さんが来てくれて本当に嬉しかった。
だからこれは嬉し泣きなんです』
ニッコリと何時ものように笑おうと無理をするガキを俺は堪らず抱き締めた。
その体はあまりに小さく簡単に壊れてしまいそうだった。
あの時のアイツが何だったのか知らない。
コイツは俺たちに嘘を付いているのかもしれないし、もしかしたらコイツ自身自分の事を良く知らないのかもしれない。
ただ、
いつもの、
今のコイツは、
バカでアホで泣き虫で暖かいコイツの事は信じていたい。
手離したくない。
想像以上の戦力を持っていたからだけじゃない。
俺はただ、コイツの作った甘味を食べて、コイツの歌う歌を聞いて、コイツの笑った顔が見たい。
ただ、それだけだ。
それだけのために側にいて欲しい。
「どうしちまったんだろうなァ俺は」
本当にどうかしている。
チサを抱きしめる腕に力がこもる。
『た、高杉さん?』
腕の中のガキが真っ赤な顔で俺を見上げる。
「…お前は俺が必ず守ってやる」
敵から
鬼兵隊から
お前自身から。
誰にもお前を壊させたりしねェよ。
俺はお前が………